定着率向上、採用コスト減!中小企業ほど「リファラル採用」をすべき理由

人手不足が深刻化するなか、求人広告を出しても応募が集まらず、転職エージェントを使えば採用コストが膨らむ――。そんな中小企業で注目されているのが、社員が知人や元同僚を紹介する「リファラル採用」です。東京商工リサーチの調査では、中小企業が「従業員の定着率が最も高い」と回答した採用方法では、リファラル採用がトップとなりました。
中小企業で「リファラル採用」が注目される理由
人手不足が続くなか、企業の採用方法が変わり始めています。
これまで企業の採用といえば、新卒採用、ハローワーク、求人広告、転職エージェントなどが中心でした。しかし最近は、社員が友人や知人、元同僚などを会社に紹介する「リファラル採用」や、一度退職した社員を再び雇用する「アルムナイ採用」が広がっています。
リファラル採用は、単なる「縁故採用」とは異なります。社員が自社の仕事内容や企業文化、求める人材像を理解したうえで、「この人なら自社に合いそうだ」と考える人を紹介する仕組みです。紹介されたからといって採用が決まるわけではなく、原則として通常の選考を行います。
東京商工リサーチが2026年6月に発表した「企業の採用に関するアンケート調査」では、従業員の定着率が最も高い採用方法について、全体では「いずれも大差ない」が40.4%で最多でした。「いずれも大差ない」を除くと、「リファラル採用」が18.5%でトップでした。「ハローワークを通じた中途採用」が12.1%、「新卒採用」が10.4%、「転職エージェントからの紹介」が5.4%でした。
しかも、リファラル採用はすでに企業の約半数導入されています。
リファラル採用だけを取り入れている企業は22.2%、リファラル採用とアルムナイ採用の両方を取り入れている企業は27.0%で、合わせると49.2%です。大企業では60.4%、中小企業でも48.3%が導入しています。
特に注目したいのが、中小企業が定着率が高いと評価している採用方法です。大企業では定着率が高い採用方法として「新卒採用」が26.5%で最多でしたが、中小企業では「リファラル採用」が19.0%でトップ。「新卒採用」は9.1%にとどまりました。知名度や採用予算で大企業と競争するのが難しい中小企業だからこそ、「社員の人脈」という独自の採用ルートが力を発揮していると考えられます。
ミスマッチを減らせる一方、人材の偏りには注意
リファラル採用のメリットの一つが、求人広告費や人材紹介会社への成功報酬を抑えられます
転職エージェントを利用すれば採用決定時に成功報酬が発生し、求人広告も掲載料が必要です。これに対してリファラル採用は既存社員の人脈を利用するため、広告費や紹介手数料を抑えられます。社員に紹介報酬を支払う企業もありますが、東京商工リサーチの調査では、リファラル採用を取り入れている企業の40.9%が「報酬は支払っていない」と回答しています。報酬を支給している企業でも「1万円~10万円未満」が20.7%で最多でした。
しかし、リファラル採用のメリットはコストだけではありません。より重要なのが、採用時のミスマッチを減らせることです。
通常の採用では、応募者が会社について知る情報は求人票、採用サイト、面接などに限られます。企業側は会社の魅力を伝え、応募者側も自分をよく見せようとするため、入社後に「思っていた仕事と違った」「職場の雰囲気が合わない」といったギャップが生じることがあります。
リファラル採用なら、候補者は知人である社員から仕事内容や職場の雰囲気、働き方などのリアルな情報を事前に聞くことができます。会社側も、自社をよく知る社員が「この人なら合いそうだ」と考えた人にアプローチできます。企業と候補者の双方がある程度相手を理解したところから採用活動が始まるため、入社後のミスマッチを減らし、早期離職を防ぐ効果が期待できます。
一方、デメリットもあります。社員の知人や元同僚が中心になるため、似た価値観や経歴の人が集まり、人材が偏る可能性があります。また、紹介した人が不採用になったり、採用後に退職したりすれば、紹介者との人間関係に影響することもあります。
人手不足解消より重要な「定着する人」を採用する
中小企業にとってリファラル採用が重要なのは、採用市場で大企業と同じ戦い方をする必要がなくなるからです。大企業には知名度があり、採用広告に多額の費用を使えます。福利厚生や教育制度をアピールし、多くの新卒を採用して時間をかけて育成することもできます。中小企業が同じ条件で競争すれば不利になりがちです。
そこで重要になるのが、「何人応募してきたか」ではなく「自社に合う人を採用できたか」という発想です。特に中小企業では、一人の採用ミスマッチが組織に与える影響が大きくなります。小規模な職場ほど人間関係が密接で、大企業のように部署異動によってミスマッチを吸収できる余地も限られています。
逆に、自社の企業文化に合う人材を採用できれば、大きな戦力になります。
リファラル採用では、社員が「自社に合いそうだ」と考える人を紹介します。候補者も知人から会社の実情を聞いたうえで応募するため、入社前から会社への理解が進んでいます。入社時点ですでに社内に知人がいることも、新しい職場に適応しやすくする要因になります。
ただし、「紹介者がいるから大丈夫」と考えてはいけません。リファラル採用で入社した社員にも、人事や上司によるオンボーディングや定期面談などのフォローが必要です。紹介者だけに新人のサポートを任せず、チーム全体で受け入れることが定着につながります。
もう一つ重要なのが、リファラル採用と社員エンゲージメントの関係です。社員が友人や元同僚を会社に誘うには、「この会社なら人に勧められる」と思っている必要があります。待遇や職場環境に大きな不満がある会社で「知人を紹介してください」と呼びかけても、社員は動いてくれません。
つまりリファラル採用は採用制度であると同時に、社員が自社をどう評価しているかを映す鏡でもあるのです。
「求人を出して待つ」採用から転換できるか
これからの中小企業は、採用方法そのものを考え直す必要があります。求人広告を出し、応募者を待ち、応募が少なければ広告費を増やす。人手不足がさらに深刻になれば、この方法だけでは、採用コストがさらに膨らむ可能性があります。
だからといって、採用をリファラル採用だけに切り替えればよいわけではありません。新卒採用、ハローワーク、求人広告、転職エージェント、アルムナイ採用、SNS採用など、それぞれの長所を理解し、自社に適した採用ルートを組み合わせる必要があります。そのなかでもリファラル採用は、中小企業の「社員同士や経営者との距離が近い」という特徴を強みに変えられる採用方法です。
導入するなら、まず「どんな人に来てほしいのか」を明確にします。求める人物像や必要なスキル、会社のビジョンを社員と共有し、紹介方法や選考プロセスを分かりやすくします。紹介報酬を設ける場合は支給条件を明確にし、採用人数だけでなく入社後の定着率まで確認することも重要です。
そして何より必要なのが、「社員が知人に紹介したいと思える会社」をつくることです。リファラル採用は魔法の採用方法ではありません。しかし、社員が自社の仕事や職場に魅力を感じ、その魅力を自分の言葉で知人に伝えられる会社なら、知名度や広告予算で大企業に負けても人材を採用できる可能性があります。
人手不足時代の採用競争で中小企業に必要なのは、大企業と同じ方法で人材を奪い合うことではありません。「応募者を集める採用」から「自社に合う人とつながる採用」へ。採用コストを抑えながらミスマッチを減らし、入社した人に長く働いてもらう。リファラル採用は、そのための有力な選択肢の一つです。
文=KIJIKUL編集部
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