OKI「黒字リストラ」4000人の衝撃!高配当と同時に進める人員削減は成功するのか

OKI(沖電気工業)が、55歳以上など約4000人を対象とする希望退職制度に踏み切りました。2026年3月期は営業利益188億円の黒字で、年間配当も45円から65円へ増配しています。それでも、なぜグループ社員の約3分の1に相当する人員を対象にするのでしょうか。「黒字リストラ」が大企業で広がるなか、OKIの決断は将来の成長に向けた構造改革なのでしょうか。

対象4000人のOKI「黒字リストラ」の衝撃

「会社が赤字だから人員を減らす」。かつてのリストラは、こうした経営危機への対応という意味合いが強いものでした。しかし、OKIが今回打ち出したのは、それとは異なる「黒字リストラ」です。

OKIは2026年7月15日、グループ社員を対象に「セカンドキャリア支援制度特別措置」を実施すると発表しました。対象となるのは、10月31日時点で満55歳以上かつ勤続10年以上の正社員と、定年退職後の再雇用社員です。

グループ社員約1万2000人のうち、条件に該当するのは約4000人。実際に4000人を削減すると決めたわけではなく、募集人数も設定していません。正確には、約4000人を対象とした希望退職制度です。それでも、グループ社員のおよそ3分の1が対象となる規模は大きく映ります。

しかも、OKIは赤字企業ではありません。2026年3月期の売上高は前期比6.8%減の4216億円でしたが、営業利益は1.2%増の188億円、経常利益は23.6%増の208億円、純利益は72.4%増の215億円でした。

ただし、純利益が大きく増えた理由には、エトリアへの参画に伴う事業譲渡益などがあります。本業の収益力を示す営業利益は前年の186億円からほぼ横ばいでした。「絶好調だから余裕を持って人を減らす」というほど単純な決算ではありません。

事業別でも、パブリックソリューションは売上高1397億円、営業利益181億円と好調だった一方、エンタープライズソリューションは売上高16.3%減、営業利益21.4%減。コンポーネントプロダクツも売上高10.1%減、営業利益32.7%減でした。

会社全体では黒字でも、事業構造を変えなければ将来の成長が難しいという事情が透けて見えます。

高配当との同時進行が生む違和感

OKIだけが特殊なわけではありません。東京商工リサーチによると、2025年度に早期・希望退職募集が判明した上場企業は46社、募集人数は2万781人に達しました。募集企業の約7割にあたる32社が直近決算で最終黒字でした。パナソニックHD、三菱電機、三菱ケミカルグループなどでも、黒字のうちに人員構成や事業ポートフォリオを変える動きが広がっています。

企業側からすれば合理的な面があります。業績が悪化してから構造改革を始めるより、利益と現金があるうちに退職加算金を払い、成長分野へ人材と資金を振り向けるほうが経営の選択肢は広がります。

また、人手不足だからといって、すべての部門で人が足りないとは限りません。既存事業では余剰人員を抱える一方、AI、ソフトウェア、DXなどでは人材が不足する「人材のミスマッチ」も起きています。

問題は、その構造改革が何を目指しているのかです。OKIの2026年3月期の年間配当は1株45円から65円へ増え、配当総額は約39億円から約56億円へ増加しました。2027年3月期も65円を予定しています。会社側は株主還元を「経営の最重要施策の一つ」と位置づける一方、設備投資や研究開発、人的資本投資なども踏まえて配当を決めると説明しています。

つまり、株主には増配しながら、社員には早期退職という選択肢を提示する構図です。もちろん、配当と人員政策は別の経営判断です。しかし、従業員から「なぜ黒字で増配できる会社が、自分たちに退職を促すのか」という疑問が出るのは当然でしょう。

黒字リストラが評価されるかどうかは、「何人減らしたか」ではなく、その先にどのような会社をつくるのかを示せるかにかかっています。

OKIのリストラは本当に必要なのか

重要な手掛かりが、2026年度から始まった「経営計画2031」です。OKIは創業150周年となる2031年を見据え、「コア事業の革新」と「高成長市場への挑戦」を掲げています。事業セグメントの再編や戦略投資に加え、人的投資を含む経営基盤への積極投資も進める方針です。

2027年3月期は売上高4400億円、営業利益220億円を計画。前期比で売上高4.4%増、営業利益16.7%増となり、営業利益率5%以上を目指します。会社自身が新経営計画を「守りから攻めへ経営シフトする」計画と位置づけています。2031年に向けて成長事業へ軸足を移すのであれば、人員配置を変える必要性は理解できます。

一方、今回の制度にはリスクもあります。対象を55歳以上としているため、長年にわたって技術、顧客、人脈、製造ノウハウを蓄積してきたベテラン層が会社を離れる可能性があります。

特に製造業では、マニュアルに書かれていない技能や顧客との関係が競争力になっている場合があります。人件費だけを基準に中高年社員を減らせば、短期的には固定費を削減できても、技術継承や若手育成に支障をきたしかねません。

直近の業績にも不安材料があります。2027年3月期第1四半期は売上高861億円と前年同期比1.2%増でしたが、営業損失は19億円となり、前年同期の14億円から赤字幅が拡大しました。会社側は通期予想を据え置いています。

事業別ではパブリックソリューションが増収増益だった一方、金融ソリューションは売上高12.9%減、営業利益85.5%減となっています。

OKIに必要なのは、単純な「人数削減」ではなく、収益力の高い事業へ人と資金を移す構造転換だと考えられます。

対象4000人、その後にOKIは何を増やすのか

黒字リストラの最大の落とし穴は、コスト削減そのものが目的になることです。人件費を削減すれば短期的に利益率は改善しますが、それだけでは売上高や競争力は高まりません。今回の施策の成否を判断するポイントは「何人応募したか」ではなく、その後に何を増やせたかです。

成長分野への人材配置、新たな専門人材の採用、研究開発や設備、AI・DXへの投資を進められれば、今回の希望退職は未来に向けた構造改革になります。逆に、ベテラン社員が大量に退職し、残った社員の負担だけが増えれば、短期的な利益改善と引き換えに中長期の競争力を失う危険があります。

年間65円の配当を維持しながら、約4000人を対象に希望退職制度を実施するOKI。その経営判断が正しかったかどうかは、退職者数ではなく、「その後、OKIが何を増やしたのか」によって判断されるでしょう。

黒字リストラは、それ自体が成長戦略ではありません。人員削減によって生まれた経営資源を次の成長へどう振り向けるのか。OKIの本当の勝負は、今回の制度が終了した後から始まります。

文=KIJIKUL編集部
※本記事は情報提供を目的として作成したものであり、特定の企業、商品、サービス、金融商品、投資その他の取引を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容は記事公開時点の公開情報等に基づいており、意見・見解・予測などは執筆者または編集部の判断によるもので、予告なく変更される場合があります。内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、最終的な判断はご自身の責任において行ってください。【KIJIKUL編集部】

\ 最新情報をチェック /