「高値づかみ」は杞憂だった?資さんうどん急成長、すかいらーくが業績上方修正

すかいらーくホールディングスが好調です。2026年12月期上期は売上収益が前年同期比9.7%増、営業利益は20.9%増となり、通期業績予想も上方修正しました。成長を支える存在の一つが、約240億円を投じて買収した「資さんうどん」です。買収時には価格を疑問視する声もありましたが、関東・関西への進出で店舗数と収益が急拡大しています。
売上42%増、利益71%増!「資さんうどん」が急成長
ガストやバーミヤン、しゃぶ葉などを展開する外食最大手のすかいらーくホールディングスで、2024年に買収した「資さんうどん」が急成長しています。
資さんうどんは1976年に北九州市で創業したうどんチェーンです。柔らかな麺と甘めのだし、「肉ごぼ天うどん」などで知られ、うどんだけでなく丼物、おでん、ぼた餅など豊富なメニューをそろえています。
すかいらーくは2024年10月、資さんうどんを運営する資さんを約240億円で買収しました。買収時の国内店舗数は74店でしたが、すかいらーく傘下に入ってから出店が加速しています。2026年6月末には110店まで増加しました。買収から約1年8カ月で36店増えたことになります。2026年上期だけでも、資さんうどんへの業態転換を16店実施しています。
店舗数以上に目を引くのが収益の伸びです。2025年12月期の資さんうどん事業の売上高は228億円、営業利益は11億円となりました。前年度比では売上高が42%増、営業利益が71%増です。店舗数は94店と27%増だったため、売上の伸びは店舗数の増加率を上回っています。
その原動力となっているのが、地元・九州を飛び出した関東・関西への進出です。関東・関西店舗の1店舗当たり平均年商は、九州店舗の1.6倍、すかいらーくの既存業態店舗平均と比べても約3倍に達したとされています。地方で人気だったブランドが首都圏など人口の多い市場に進出し、より大きな売上を獲得する――。すかいらーくが資さんうどんを買収した狙いが、数字として表れ始めたといえそうです。

なぜ資さんうどんは「すかいらーく」で伸びたのか
では、なぜ資さんうどんは買収後に急速に店舗を増やせたのでしょうか。
大きな理由が、すかいらーくが全国に持つ店舗網です。外食チェーンが新しい店を出す場合、土地や物件を探し、店舗を建設し、人材を採用しなければなりません。当然、時間も投資資金も必要になります。ところが、すかいらーくにはガストをはじめとする既存店舗が全国にあります。成長性や地域特性などを踏まえて既存店を資さんうどんへ転換すれば、ゼロから店舗をつくる必要がありません。
既存店舗から資さんうどんへの業態転換では、更地から新店をつくる場合と比べ、1店舗当たりの初期投資額と工事期間を約半分に抑えられたとされています。これは、すかいらーくによる買収の大きな強みです。資さんうどん側から見れば、自力で全国の物件を探して出店するより、すかいらーくの店舗資産や出店ノウハウ、物流、食材調達、人材などを利用したほうが全国展開のスピードを上げられます。
一方、すかいらーく側にとってもメリットがあります。成熟した既存ブランドの店舗を、成長力の高いブランドへ転換することで、保有する店舗資産の収益力を高められるからです。2026年上期には資さんうどんを中心にグループ全体で26店を業態転換しました。新規出店21店と合わせると、新規出店・業態転換による増収効果は108億円に達しています。既存店による増収効果112億円とほぼ同じ規模です。
つまり、すかいらーくの成長は「ガストなど既存店の売上を伸ばす」だけではありません。既存の店舗網を成長ブランドへ組み替えること自体が、新たな成長戦略になっているのです。
さらに、資さんうどんは海外にも進み始めました。2026年6月には台湾1号店をオープンしました。会社側によれば出足は非常に好調で、2026年中に台湾に3店舗、中長期では100店舗以上を目標としています。さらに東南アジアへの展開も検討しています。北九州のローカルチェーンだった資さんうどんが、全国ブランドを超えて海外ブランドへ成長する可能性まで出てきたわけです。
売上収益は2424億、営業利益169億円で業績も好調
資さんうどんだけではなく、すかいらーくグループ全体の業績も好調です。2026年12月期上期の売上収益は2424億5700万円で前年同期比9.7%増、事業利益は169億5900万円で13.4%増、営業利益は168億5700万円で20.9%増となりました。親会社の所有者に帰属する中間利益も101億8100万円と29.2%増えています。
注目したいのは、物価高で食材費や人件費が上昇するなかでも利益を増やしていることです。国内既存店の売上高は前年同期比6.5%増、客数は1.6%増、客単価は4.8%増でした。値上げなどによって客単価を引き上げながら、客数も減らしていません。会社側は、消費者の「節約志向」と「体験価値重視」という二極化に対応したことが奏功したと説明しています。
低価格の小皿料理を充実させる一方、有名シェフや人気IPとのコラボレーション、季節限定フェアなど「外食だから楽しめる商品」も投入しました。さらにテレビやSNSを使って来店動機をつくった結果、客数と客単価の両方が伸びました。
もちろん、コスト上昇の影響がなくなったわけではありません。2026年上期にはインフレによって事業利益を58億円押し下げる要因が発生しました。しかし、既存店の成長や原価低減策などで61億円、新店・業態転換で17億円の増益効果を生み出しました。その結果、事業利益は前年同期から20億円増、営業利益は29億円増となっています。
原材料高を価格転嫁するだけではなく、客数を増やし、既存店を成長させ、店舗構成も変えることでコスト増を吸収している点が現在のすかいらーくの強さでしょう。
好調な上期を受け、会社は8月13日に2026年12月期の通期業績予想を上方修正しました。売上収益は従来予想の4900億円から5000億円へ、営業利益は335億円から350億円へ、当期利益は195億円から205億円へ引き上げました。年間配当予想も26円から27円へ1円増額しています。売上収益5000億円という大台が視野に入ったことになります。
資さんうどんが成長エンジンへ、M&Aは成功するのか
資さんうどんの買収で興味深いのは、買収直後から成功が約束されていたわけではないことです。買収金額は約240億円。地方を中心に展開していたうどんチェーンとしては大きな投資であり、買収価格に見合う成長を実現できるかが注目されていました。
しかし、現在までの数字を見る限り、その懸念を払拭する方向へ進んでいます。そして重要なのは、すかいらーくが資さんうどんだけでM&Aを終わらせようとしていないことです。同社は2025~2027年中期事業計画で、3年間に3~5件程度のM&Aを掲げています。2024年10月の資さんうどんに続き、2025年にはマレーシアの外食企業、2026年4月には「しんぱち食堂」を運営するしんぱちを買収しました。
すかいらーくが目指しているのは、単に外食企業を買い集めることではないでしょう。全国の店舗網、物件開発、食材調達、物流、人材、DXなど、自社が長年築いてきた巨大な経営インフラに、成長余地のある外食ブランドを載せる。そして出店スピードと収益力を高める――。資さんうどんは、そのモデルが機能するかを占う最初の大型案件といえます。
次に試されるのが、しんぱち食堂です。すかいらーくはグループ入り後、出店候補地の選定などで自社リソースを活用し、2026年下期から2027年にかけて出店を加速させる方針です。資さんうどんで成功した「人気ブランド×すかいらーくの経営インフラ」という成長モデルを、別のブランドでも再現できるのかが問われます。
一方で、M&Aにはリスクもあります。2026年6月末の「のれん」は1714億円に達しています。M&Aしたブランドが期待した利益を生まなければ、将来的な減損リスクにもつながります。資さんうどんの急成長は、すかいらーくにとって一つの成功事例になりつつあります。しかし、本当の勝負はこれからです。
地方の人気チェーンを買収し、全国、そして海外へ育てることができれば、すかいらーくは「ガストを中心とするファミレス企業」から、有望な外食ブランドを発掘し、巨大な経営インフラで成長させる企業へ変わる可能性があります。
資さんうどんがどこまで店舗を増やし、利益を伸ばせるのか。そして第2、第3の「資さんうどん」を生み出せるのか。今後のすかいらーくを見るうえで、M&A後のブランド育成力が重要なポイントになりそうです。
文=KIJIKUL編集部
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