「全国メインバンク調査」3メガバンクが圧倒!金利上昇で変わる銀行の稼ぐ力

東京商工リサーチの2026年「全国メインバンク調査」で、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクが取引社数の上位を独占しました。なかでも三井住友銀行は、3メガで唯一、取引社数を増やしています。一方、増加率ではGMOあおぞらネット銀行などネット銀行が躍進しました。金利上昇で銀行が再び「預金と融資で稼げる時代」を迎えるなか、顧客獲得競争はどう変わるのでしょうか。
メインバンク力を誇示する3メガバンクの実力
企業にとって銀行は、単なる振込や預金のための金融機関ではありません。運転資金や設備投資の融資、資金繰り、M&A、事業承継などを相談する重要な経営パートナーです。その企業が最も重要な取引先と位置付ける「メインバンク」で、3メガバンクが圧倒的な強さを見せています。
東京商工リサーチが全国162万4517社を対象に実施した2026年の調査では、三菱UFJ銀行が12万7218社で14年連続トップ。2位は三井住友銀行の10万2557社、3位はみずほ銀行の8万575社でした。3行を合わせると約31万社に達します。東京では三菱UFJ銀行が22.5%、みずほ銀行が20.3%、三井住友銀行が17.6%を占め、3行だけで約6割に達しています。
ただし、興味深い変化も起きています。前年から取引社数を増やしたのは、3メガバンクのうち三井住友銀行だけでした。三菱UFJ銀行は46社減、みずほ銀行は266社減だったのに対し、三井住友銀行は860社増、前年比0.84%増となりました。
そして、3メガバンクの強さが際立つのは、顧客数だけではありません。2026年3月期の親会社株主に帰属する純利益は、三菱UFJフィナンシャル・グループが前期比30.3%増の2兆4,272億円、三井住友フィナンシャルグループが34.4%増の1兆5,829億円、みずほフィナンシャルグループが41.0%増の1兆2,486億円でした。3社合計では5兆円を超えます。
長く続いた超低金利時代には、銀行は貸出金利と預金金利の差だけでは十分な利益を上げにくく、手数料ビジネスや海外事業などを拡大してきました。しかし、日本銀行の金融政策正常化によって、その環境は変わり始めています。
三菱UFJフィナンシャルグループでは国内2行合算の貸出金利回りが前年度の0.86%から1.15%へ上昇し、預貸金利回り差も0.80%から0.94%へ拡大しました。巨大な預金・融資基盤を持つことが、再び銀行の「稼ぐ力」に直結する時代になってきたのです。
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三井住友「Trunk」は新設法人を囲い込めるか
今回の調査で特に注目されるのが、三井住友銀行です。2026年に三井住友銀行をメインバンクとした企業の約3割は、設立5年未満でした。東京商工リサーチは、中小企業や新設法人向け金融サービス「Trunk(トランク)」が取引社数の増加に寄与した可能性を指摘しています。
ここには銀行の顧客獲得戦略の変化が表れています。従来の大手銀行は、大企業や一定の取引実績を持つ企業に強い半面、設立直後の小規模法人にとっては必ずしも身近な存在ではありませんでした。新設企業には過去の決算実績がなく、融資判断の材料も限られるからです。
しかし、銀行側から見れば、創業直後に取引を始めるメリットは大きいと考えられます。会社設立時に法人口座を開き、振込や決済、法人カードなどを利用し、その後、融資や資産運用、事業承継まで取引が広がれば、一社との関係が何十年も続く可能性があります。つまり、新設法人の獲得は「現在どれだけ利益を得られるか」ではなく、将来の優良顧客を早い段階で獲得する投資でもあるのです。
この市場で存在感を強めているのがネット銀行です。メインバンク取引社数の増加率では、GMOあおぞらネット銀行が前年比64.3%増の3217社で3年連続トップ。ドコモSMTBネット銀行(旧住信SBIネット銀行)が37.71%増の2410社、PayPay銀行が12.92%増の2211社で続きました。絶対数では3メガバンクと大きな差がありますが、増加率はまったく違います。
ネット銀行は店舗網という大きな固定費を抱えず、オンラインで口座開設や決済などを提供できます。新設法人や小規模事業者にとっても、店舗へ出向く必要がなく、デジタルで手続きを完結できる利便性は魅力です。三井住友銀行がTrunkでこの層を開拓することは、ネット銀行が得意としてきた市場にメガバンクが本格的に踏み込む動きともいえます。
金利上昇時代に銀行は「預金」を奪い合う
なぜ今、金融機関は顧客獲得を急ぐのでしょうか。背景にあるのが金利上昇です。
超低金利時代には、大量の預金を集めても、その資金を高い利回りで運用することが難しい状況が続きました。しかし、貸出金利が上昇すれば、低コストで集めた預金を融資などに回すことで得られる収益は大きくなります。
実際、りそなホールディングスでは2026年3月期の資金利益が前期比1115億円増の5920億円となりました。国内預貸金利益も、貸出金残高の増加と利回り上昇によって578億円増加しています。みずほ銀行でも国内の貸出金利回りは0.96%から1.31%へ上昇し、預貸金利回差は0.90%から1.10%へ拡大しています。
「金利のある世界」では、預金と融資という銀行の伝統的なビジネスモデルの価値が再び高まります。そこで重要になるのが顧客基盤です。企業のメインバンクになれば、融資だけでなく、預金、給与振込、決済、外国為替、法人カード、M&A、事業承継などさまざまな金融サービスにつなげられます。
メインバンク取引社数とは、単なる人気ランキングではありません。将来収益を生み出す顧客基盤の大きさを示す数字でもあるのです。
メガバンク、地銀、ネット銀行の競争は次の段階へ
もっとも、3メガバンクだけが有利になるとは限りません。地方では地銀再編が急速に進んでいます。予定を含む「1県1行」体制は全国13県に拡大。2026年には八十二長野銀行が誕生し、福井銀行と福邦銀行も合併しました。2027年には荘内銀行と北都銀行による「フィデアホールディングス」の誕生、千葉銀行と千葉興業銀行による「ちばフィナンシャルグループ」の発足などが予定されています。
再編によって規模を拡大し、システム投資などの固定費を抑えながら地域での顧客基盤を守る戦略です。一方、規模だけでは測れない強さもあります。取引先企業の増収増益率では、北國銀行が40.45%で初のトップとなり、北陸銀行37.96%、宮崎銀行37.64%と地方銀行が上位を占めました。
これからの銀行に問われるのは、単に「何社と取引しているか」ではなく、「取引先企業をどれだけ成長させられるか」でしょう。3メガバンクは巨大な顧客基盤と総合金融力、地銀は地域企業との深い関係、ネット銀行は低コストとデジタルの利便性という強みがあります。
金利上昇は銀行にとって追い風ですが、すべての金融機関が同じように恩恵を受けるわけではありません。預金を集め、融資先を開拓し、企業の成長を支援しながら、長期的な取引関係を築けるか。
2026年の「全国メインバンク調査」が映し出しているのは、3メガバンクの圧倒的な強さだけではありません。Trunkによる新設法人の開拓、ネット銀行の急成長、地銀の大型再編という、次の顧客争奪戦の始まりです。
「金利のある時代」に入り、日本の銀行業界は再び、顧客基盤をいかに「稼ぐ力」に変えるかを競う時代を迎えています。
文=中田英明(経済ジャーナリスト)
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