株価34%急落のワークマンが好決算!「リカバリーウェア」は覇権を握れるか

作業服大手のワークマンの株価が激しく揺れています。2026年6月3日に8330円の年初来高値をつけた後、7月22日には5530円まで約34%下落しました。しかし、8月3日に発表した2027年3月期第1四半期決算は営業利益が前年同期比33.3%増となる好決算です。その成長を支える商品の一つが「MEDiHEAL(メディヒール)」です。ワークマンは、リカバリーウェア市場の覇権を握れるのでしょうか。

好業績でも株価34%急落、何が起きたのか

作業服大手のワークマンの業績を見る限り、株価が大幅に下落するような状況には見えません。

2026年3月期は、チェーン全店売上高が前期比14.3%増の2092億3400万円、営業総収入が17.5%増の1608億5200万円、営業利益が21.7%増の296億7600万円、当期純利益が22.1%増の206億1800万円となりました。

2027年3月期に入っても好調です。8月3日に発表した第1四半期決算は、営業総収入が前年同期比24.7%増の518億1200万円、営業利益が33.3%増の120億3100万円、経常利益が34.6%増、四半期純利益も34.0%増となりました。

それでも株価は6月3日の8330円から7月22日の5530円まで急落しました。

きっかけの一つが6月の月次売上です。天候不順によってファンウェアや半袖Tシャツなど夏物商品が伸び悩み、既存店売上高が前年同月を下回りました。さらに警戒されたのが円安です。ワークマンは海外で生産・調達する商品が多く、円安になれば仕入れコストが上昇します。一方、最大の強みは「高機能・低価格」であり、大幅な値上げはブランド戦略と相性がよくありません。

つまり、株式市場が懸念したのは現在の業績ではなく、高い成長率を今後も維持できるのかという点です。実際、第1四半期が大幅増益でも、会社は通期予想を上方修正していません。2027年3月期の営業利益予想は前期比8.2%増の321億1200万円です。

投資家が見ているのは過去最高益ではなく、その先の成長です。そこで次の成長エンジンとして注目されるのが、リカバリーウェアです。

後発なのに主役へ、価格破壊が変えた市場

今回取り上げるリカバリーウェアは、遠赤外線による血行促進などによって疲労や筋肉のこりを和らげることを目的とした一般医療機器です。

すでに高価格帯の商品を展開する先行企業が存在するなか、ワークマンは後発として参入しました。それでも一気に存在感を高めたのが「MEDiHEAL(メディヒール)」です。上下セット3800円という価格で一般向けに投入すると、約4カ月で約319万点、約55億円を販売。需要が予想を上回り、品薄になるほどのヒット商品となりました。

さらに、ワークマンは2026年、供給量を大幅に拡大するとともに、税込990円のインナーまで投入しました。重要なのは、これを単なる価格破壊と考えないことです。

1万円を超える商品なら、「自分に合うのか」「効果を感じられるのか」と購入をためらう消費者も少なくありません。しかし990円なら、一般的な機能性インナーを買う感覚で試すことができます。

さらに肌着なら洗濯を考えて複数枚購入する可能性があります。本人が気に入れば家族にも広がります。つまりワークマンが狙っているのは、既存の高級リカバリーウェアを安く売ることではありません。「特別なときに着る商品」から「毎日着る商品」へ市場を変えることです。これは同社が掲げる「すべての人に機能性ウェアを」という戦略にも合致します。

2027年3月期第1四半期には「MEDiHEALインナー」や暑熱軽減ウェア「XShelter」などが売上を牽引し、PB商品のチェーン全店売上高構成比は前年同期より6.4ポイント上昇して74.9%となりました。

リカバリーウェアは一過性のヒット商品ではなく、ワークマンが進める「マス化製品政策」の象徴になりつつあります。

勝負の本質は「低価格」ではなく、市場の作り替え

では、990円という価格を武器に、ワークマンが市場の主導権を握るのでしょうか。

必ずしもそうとは限りません。高価格帯の商品には、ブランド力、独自素材、デザイン、睡眠や休養へのこだわり、贈答需要といった強みがあります。「自分への投資」として数万円の商品を購入する消費者も存在します。

むしろ今後起こりそうなのは市場の二層化でしょう。高価格帯は「質の高い休養」やブランド価値を競い、ワークマンは「まず試す」「毎日使う」という大衆市場を広げる。この場合、ワークマンが既存企業から顧客を奪わなくても、リカバリーウェア市場そのものが拡大します。

ここにワークマンの強みがあります。高機能商品を安く作るだけでなく、大量生産し、1000店舗を超える店舗網で販売し、SNSやテレビCMで認知を高め、一気に一般消費者へ普及させる仕組みを持っています。

第1四半期末の店舗数は1107店舗に達しました。かつてファンウェアが「現場作業員向けの商品」から一般消費者にも使われる夏の機能性ウェアへ広がったように、リカバリーウェアでも市場の境界線を動かそうとしているのです。

「2100万着」の大勝負、覇権を左右する3つの条件

もっとも、大増産がそのまま成功につながるとは限りません。

第一の課題は在庫管理です。2025年は需要が供給を上回りましたが、2026年は2100万着規模の販売を目指します。品切れによる機会損失を減らせる半面、ブームが一巡すれば大量在庫を抱える危険があります。

第二は説明力とブランド力です。一般医療機器である以上、商品の特徴を正確に伝える必要があります。990円という安さが強調されすぎれば、「普通の安いインナーと何が違うのか」が消費者に伝わらなくなる恐れもあります。

そして最も重要なのがリピート購入です。319万点売れたこと以上に重要なのは、購入者が2枚目、3枚目を買うかどうかです。「話題だから一度買った」で終わればブームですが、「毎日着たいから買い足す」なら定番になります。

ワークマンはすでに営業総収入1600億円を超える企業となりました。さらに成長するには、既存市場でシェアを奪うだけでは十分ではありません。新しい市場そのものを作る必要があります。

リカバリーウェアは、その試金石です。990円から試せる商品を全国の店舗で大量販売し、これまでリカバリーウェアを買わなかった人まで取り込む。「高価格の特別なウェア」から「毎日着る機能性ウェア」へ――。この転換に成功すれば、後発のワークマンが市場のルールを変え、主導権を握る可能性があります。

2100万着が一時的なブームで終わるのか、それとも「リカバリーウェアの日常化」を実現するのか。ワークマンの次の成長を決めるのは、990円という価格ではなく、生活者の習慣を変えられるかどうかなのです。

文=中田英明(経済ジャーナリスト)
※本記事は情報提供を目的として作成したものであり、特定の企業、商品、サービス、金融商品、投資その他の取引を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容は記事公開時点の公開情報等に基づいており、意見・見解・予測などは執筆者または編集部の判断によるもので、予告なく変更される場合があります。内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、最終的な判断はご自身の責任において行ってください。【KIJIKUL編集部】

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