トヨタ減益、日産・ホンダ赤字転落!なぜスズキは自動車不況でも強いのか?

日本の自動車業界で異変が起きています。2026年3月期はトヨタが巨額利益を確保しながら減益となり、日産自動車とホンダは最終赤字に転落しました。一方、スズキは売上収益6兆円を突破し、最終利益は増益でした。さらに2027年3月期第1四半期も営業利益11.2%増と好調を維持しています。「軽自動車メーカー」のイメージが強かったスズキは、なぜ世界の自動車メーカーが苦しむ逆風下でも稼げるのでしょうか。

トヨタ減益、日産・ホンダ赤字でもスズキが強い理由

2026年3月期決算では、日本の大手自動車メーカーの明暗が鮮明になりました。トヨタ自動車は売上高50兆円を突破する圧倒的な規模を維持したものの減益。日産自動車は最終赤字5330億円、ホンダも最終赤字4239億円となりました。

対照的だったのがスズキです。2026年3月期の売上収益は前期比8.0%増の6兆2930億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は5.6%増の4392億円でした。営業利益は人材や技術への成長投資を増やした影響で3.1%減の6229億円となったものの、営業利益率は9.9%を確保しています。

売上規模ではトヨタ、ホンダ、日産に及びません。しかし、日産とホンダが赤字となった結果、大手自動車メーカーの最終利益では、スズキがトヨタに次ぐ水準となる逆転現象が起きました。

そして好調は2027年3月期に入っても続いています。第1四半期の売上収益は前年同期比22.0%増の1兆7057億円、営業利益は11.2%増の1580億円。親会社の所有者に帰属する四半期利益は80.0%増の1836億円まで拡大しました。

原材料価格が上昇する逆風下でも、販売台数の増加、車種構成の改善、原価低減などによって吸収しています。四輪事業だけでも売上収益は22.6%増、営業利益は12.5%増となりました。

なぜ、トヨタ、日産、ホンダが関税、電動化投資、北米市場などに揺さぶられるなか、スズキは高収益を維持できるのでしょうか。理由は「インドで売れているから」だけではありません。

「インドで売れる」だけではない高収益の秘密

スズキの最大の強みがインドであることは間違いありません。2026年3月期のインドでの四輪車販売は186万台を超え、過去最高を更新しました。日本での四輪車販売約72万台を大きく上回り、スズキにとって最大の市場です。

しかもインドは単なる販売市場ではありません。現地で生産した車両を日本や世界各地へ輸出するグローバル生産拠点でもあります。「フロンクス」だけでなく、スズキ初の量産BEV(バッテリーEV)「eビターラ」もインドで生産されます。

スズキは2026年3月期の増収要因として、インドでのGST(物品・サービス税)改定を背景に市場環境が想定以上に活発化するなか、生産・物流体制を柔軟に見直し、需要増に対応したことを挙げています。

もう一つの強みは、小型車を中心とする事業構造です。大型車や高級車で巨額の利益を狙うビジネスモデルではなく、価格に敏感な巨大人口市場で「必要十分な性能を持つ車を大量に販売する」という戦い方を磨いてきました。

そのモデルはインドだけでなく、パキスタンやアフリカでも存在感を高めています。2026年3月期のパキスタン販売は前期の6.9万台から8.8万台へ増加。アフリカも12.7万台と15%を超える伸びとなりました。巨大な人口を抱えながら自動車普及率に成長余地がある地域は、スズキにとって有望市場です。

さらに見逃せないのが「稼ぐ力」です。原材料価格が上昇しても、販売台数の増加、売上構成の改善、原価低減などで利益を生み出す。2027年3月期第1四半期も、会社は「販売台数の増加、売上構成の改善、原価低減など、稼ぐ力の改善活動」が増益につながったと説明しています。

つまり、スズキの強さは、「成長する新興国」「小型車への集中」「低コスト経営」が組み合わさっていることにあります。加えて、現在のスズキは米国で四輪車の新車販売を展開していないという特殊性があります。

他の日本メーカーにとって巨大な収益市場である米国を持たないことは、平時なら弱点にもなります。しかし、関税政策が経営を揺さぶる局面では、米国依存度の低さが逆にリスク耐性として働きます。「持っていない市場」が強みになるという皮肉な構図です。

インド依存は弱点にも、次の成長市場はどこか

しかし、スズキの好調がこのまま続く保証はありません。最大のリスクは、強さの源泉であるインドへの依存です。インド市場では依然として圧倒的な存在感を持つものの、現地メーカーや韓国勢などとの競争は激しく、市場シェアは長期的には低下傾向にあります。

自動車市場そのものが拡大しているため販売台数を増やすことはできても、競争相手が増えれば価格競争や販売促進費の増加につながります。

そこでスズキが狙うのが、インドを「世界市場への橋頭堡」に変える戦略です。インドの生産能力を拡大し、国内需要だけでなく輸出も増やす。同時に、パキスタン、アフリカなどインドで培った小型車ビジネスが通用しやすい市場へ展開していきます。

会社も2026年3月期決算で、日本で培った成果や知見をインドだけにとどめず、世界各地域へ展開して四輪、二輪、マリン、新規事業の成長につなげる方針を示しています。これはトヨタなどと真正面から世界シェアを争う戦略とは異なります。

高級車や大型SUV、EVで世界最大手を目指すのではなく、人口が増え所得水準が上昇する国で「初めて買う車」「生活に必要な小型車」を押さえる。スズキが得意とする土俵を世界へ広げようとしているのです。

「スズキだけが笑う」は続くのか、成長戦略の試金石

スズキは中期経営計画で、2030年度に売上収益8兆円、営業利益率10%、ROE13%という目標を掲げています。2026年3月期は営業利益率9.9%、ROE13.8%となり、収益性の指標では計画初年度から2030年度目標にほぼ到達しました。

しかし、足元には警戒材料もあります。スズキは第1四半期決算と同時に2027年3月期の売上収益予想を6兆8000億円から6兆9000億円へ引き上げました。その一方、営業利益予想は5700億円から5400億円へ下方修正しています。

販売台数増や原価低減などによって約700億円の改善を見込むものの、中東情勢などを背景とした原材料価格の高騰がそれを上回ると予想しているためです。つまり、スズキも逆風と無縁ではありません。

むしろ注目すべきなのは、原材料高など共通の逆風を受けながら、それでも第1四半期で二桁の営業増益を確保していることです。

今後の勝負を決めるのは、インド市場の成長をどこまで取り込めるか。インドでの成功モデルをパキスタンやアフリカへ広げられるか。そしてEV時代でも「小さく、軽く、安く」というスズキ流の価値を維持できるかでしょう。スズキは配当についてもDOE3%を基準とする累進配当を採用し、2027年3月期は年間51円への増配を予定しています。

トヨタが巨大化し、日産やホンダが構造改革に苦しむ中、スズキは異なるルートを走っています。世界で最も大きな自動車会社になるのではなく、自分たちが勝てる市場で最も強い会社になる。

「軽自動車のスズキ」から「新興国のスズキ」へ。その転換を完成できるかどうかが、日本の自動車業界の勢力図をさらに変えることになりそうです。

文=KIJIKUL編集部
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