「全国メインバンク調査」で判明!金利復活で地銀再編が「攻め」に変わる理由

東京商工リサーチの「全国メインバンク調査2026」から、地方銀行の再編が新たな段階に入ったことが見えてきました。同一県内での統合に加え、県境を越えた「越境再編」や資本・業務提携も相次いでいます。背景にあるのは人口減少だけではありません。「金利のある世界」が復活したからこそ、預金や取引先を増やし、規模を拡大する必要性が高まっています。

生き残りをかけた地銀再編が始まった

地方銀行の再編が全国で一気に動き始めています。東京商工リサーチの2026年「全国メインバンク調査」では、経営統合や子会社化、合併予定を含めた「1県1行体制」は全国13県まで増えました。

2026年1月には八十二銀行と長野銀行が合併して八十二長野銀行が誕生し、5月には福井銀行と福邦銀行が合併しました。2027年1月には山形県の荘内銀行と秋田県の北都銀行が合併してフィデア銀行となる予定です。さらに2027年4月には千葉銀行と千葉興業銀行が経営統合し、「ちばフィナンシャルグループ(ちばFG)」を発足させる予定です。

千葉県では現在、千葉銀行がメインバンクシェア41.1%でトップ、京葉銀行が14.1%で2位、千葉興業銀行が8.2%で3位です。千葉銀行と千葉興業銀行が統合すれば、単純合計では約5割のシェアになります。

しかし、現在の再編でより注目されるのは、同じ県内の銀行同士だけではなく、県境を越える「越境再編」が増えていることです。

代表例が、新潟県を地盤とする第四北越フィナンシャルグループと群馬銀行です。両社は2027年4月をめどに経営統合し、第四北越フィナンシャルグループは「群馬新潟フィナンシャルグループ」に商号変更する予定です。新潟県では第四北越銀行がメインバンクシェア59.5%、群馬県では群馬銀行が50.1%と、いずれも地元で圧倒的なシェアを持っています。

経営が苦しい銀行同士が救済目的で統合するのではありません。それぞれの地域で強い銀行が、さらに広い営業基盤を求めて手を組むのです。同様の動きは東海・近畿にも広がっています。しずおかフィナンシャルグループと名古屋銀行は、2028年4月をめどとする経営統合に向けて基本合意しています。

さらに2026年には、滋賀銀行と大阪府を地盤とする池田泉州HDが資本・業務提携に動きました。経営統合ほど負担の大きい方式を取らず、互いの独立性を保ちながら顧客紹介やシステム、金融サービスなどで協力する方法も広がっています。

なぜ「1県1行」と「越境再編」が同時に進むのか

そもそも、なぜ今になって再編が加速しているのでしょうか。

従来、地銀再編の最大の理由とされたのは人口減少です。地方では人口と企業数が減少し、貸出先や預金者も長期的には減っていきます。一方、銀行には勘定系システムやサイバーセキュリティー、店舗、ATM、人材など多額の固定費が必要です。顧客が減るなかで複数の銀行が同じ地域でこうした設備を抱え続ければ、1行当たりの負担は重くなります。

そのため同一県内で銀行を統合し、重複店舗やシステムなどを整理することが、これまでの地銀再編の基本モデルでした。青森、長野、福井などで進んだ「1県1行」は、その象徴といえます。

しかし現在は、再編の意味が変わり始めています。大きな転換点が「金利のある世界」の復活です。低金利時代の銀行再編では、店舗を減らし、人員やシステムコストを抑える「守り」が重視されました。ところが、金利が上昇すると預金を集め、その資金を企業融資などで運用する本来の銀行ビジネスの収益性が改善します。

そうなると、単に経費を削減するだけではなく、どれだけ多くの預金と融資先を確保できるかが重要になります。日本総研の分析でも、「金利のある世界」では預金獲得競争などが激しくなり、低金利時代の経費削減中心の「守り」から、ビジネスを積極的に獲得する「攻め」への転換が必要になると指摘されています。

ここで意味を持つのが越境再編です。同一県内の統合では店舗を統廃合しやすい半面、営業地域は大きく広がりません。しかも統合する2行が同じ企業を顧客にしていれば、取引先を単純に足し算することもできません。

一方、新潟と群馬、静岡と愛知のような越境再編なら、営業地域の重複が少ないため、それぞれの顧客基盤を比較的そのままグループに取り込めます。さらに取引先が増えれば、M&A、事業承継、人材紹介、DX支援、ビジネスマッチングなどの金融以外のサービスも展開しやすくなります。

つまり、現在の地銀再編は、「経費を減らすための統合」から「市場を広げるための統合」へと変わり始めているのです。

SBI「第4のメガバンク構想」はどこへ向かうのか

もう一つ、地銀再編を考えるうえで無視できない存在がSBIグループです。SBIが地銀戦略の中で掲げてきたのが、いわゆる「第4のメガバンク構想」です。三菱UFJ、三井住友、みずほのように全国の銀行を1つの金融グループに合併するのではなく、SBI新生銀行を中核として、各地域の銀行と資本やシステム、商品、ノウハウを共有する「広域地域プラットフォーマー」を目指す構想です。

SBIは2019年の島根銀行を皮切りに、福島銀行、清水銀行、東和銀行、大光銀行などとの提携を拡大してきました。特徴は、地銀が単独では用意しにくい機能をグループで共有できることです。

例えば有価証券運用、協調融資、ファンド組成、ストラクチャードファイナンス、基幹システム、DX支援などをSBI側が提供することで、規模の小さな地銀でも大手銀行に近い金融サービスを提供できる可能性があります。

さらに2026年8月、SBI新生銀行は常陽銀行など地域金融機関14行と「地域成長投資連携協定」を締結しました。大型融資やストラクチャードファイナンス案件で地域金融機関が連携する仕組みを構築するもので、参加金融機関はさらに増える見込みとされています。

これは地銀再編の新しい姿といえます。必ずしも銀行同士が合併しなくても、融資やシステム、証券、投資などを共同化すれば、実質的に大きな金融ネットワークを構築できるからです。SBIの地銀連合構想が注目された一つの契機は、横浜銀行を傘下に持つコンコルディアFGなど有力金融機関がSBIの地方創生プラットフォームに参加したことでした。

それまでSBIには「経営の厳しい地銀を支援する勢力」というイメージもありましたが、有力地銀とのネットワークが広がれば、「弱い地銀の救済連合」から全国規模の金融プラットフォームへと性格が変わる可能性があります。

一方で、提携行の経営力には差があり、SBIを中心とした連合だけで各地銀の地域経済縮小という問題を解決できるわけではありません。

地銀再編は「弱者救済」から勝ち残る競争へ

では、これから地方銀行はどうなっていくのでしょうか。

すべての県が単純に「1県1行」になるとは考えにくいでしょう。東京商工リサーチの調査を見ると、福岡県では福岡銀行が37.7%、西日本シティ銀行が32.2%、沖縄県では琉球銀行41.5%、沖縄銀行38.9%と、有力行同士が激しく競争する地域もあります。逆に青森、長野、福井などでは1県1行への集約が進んでいます。

今後は地域ごとに、「県内統合」「越境統合」「資本・業務提携」「SBIなど広域金融グループとの連携」といった複数の再編モデルが並行して進むとみられます。重要なのは、銀行を大きくすること自体が目的ではないという点です。

メインバンク調査では、取引先企業の増収増益率で北國銀行が40.4%とトップとなり、北陸銀行、宮崎銀行が続きました。北國銀行は業界別営業や金融・非金融のソリューション提供、北陸銀行もM&A、経営コンサルティング、人材、DX・AI活用支援などに力を入れています。つまり、単純な銀行の規模と取引先企業を成長させる力は必ずしも同じではありません。

再編によって巨大な地銀グループをつくっても、システムや組織を統合できず、銀行同士の縄張り意識が残れば効果は限定的です。越境再編では特に、統合後に本部機能や専門部署、サービスをどこまで共通化できるかが重要になります。

これまで地銀再編といえば、「人口減少で経営できなくなった銀行をどう救うか」という議論が中心でした。しかし「メインバンク調査2026」から見えてくるのは、それとは違う姿です。地域トップクラスの銀行までが県境を越えて規模拡大に動き、SBIは全国の地銀を結ぶ金融プラットフォームを構築しようとしています。

これから問われるのは、「単独で生き残れるか」ではなく、「どの陣営に入り、どれだけ企業を成長させられる銀行になれるか」でしょう。地銀再編は今、「金利のある時代」を勝ち抜くための成長戦略そのものへと変わり始めています。

文=中田英明(経済ジャーナリスト)
※本記事は情報提供を目的として作成したものであり、特定の企業、商品、サービス、金融商品、投資その他の取引を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容は記事公開時点の公開情報等に基づいており、意見・見解・予測などは執筆者または編集部の判断によるもので、予告なく変更される場合があります。内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、最終的な判断はご自身の責任において行ってください。【KIJIKUL編集部】

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