西友買収で売上1兆円突破!トライアル株は好決算でどこまで戻るのか

トライアルホールディングスの2026年6月期売上高が1兆3471億円となり、初めて1兆円を突破しました。西友買収で店舗数は621店に拡大し、営業利益も過去最高を更新しています。2026年5月の第3四半期決算では業績を上方修正したにもかかわらず株価が急落しましたが、8月の本決算後は一転して急騰しました。同じ「上方修正」でも市場の評価が変わったのはなぜでしょうか。

売上高1兆3,471億円、「1兆円企業」の実態

トライアルホールディングスが一気に「売上高1兆円企業」の仲間入りを果たしました。2026年6月期の売上高は前期比67.6%増の1兆3471億円、営業利益は43.9%増の303億円。いずれも過去最高となりました。EBITDAも699億円と前期のほぼ2倍に拡大しています。

最大の理由は、2025年7月に西友を完全子会社化したことです。トライアル単体に近い既存事業の売上高は8861億円で前期比10.2%増。一方、西友は4609億円を売り上げました。西友245店舗が加わり、グループ全体の店舗数は前期末から269店増えて621店となっています。したがって、1兆3471億円という数字を「トライアルの既存店舗が急成長して1兆円を突破した」と見るのは正確ではありません。西友を買収したことで企業規模が非連続的に拡大した結果です。

しかし、重要なのは売上の足し算だけではありません。トライアル既存店売上高は前期比2.1%増となり、売上総利益率も改善しました。トライアルの売上総利益率は22.3%まで上昇し、営業利益は前期比62.8%増の343億円、営業利益率は2.6%から3.9%まで改善しています。

西友でも変化が現れています。買収後は価格政策や商品構成を見直し、トライアルの惣菜やPB商品を投入。2025年11月以降には西友店舗を転換した「トライアル西友」も展開しています。

つまり今回の1兆円突破で見るべきなのは、企業規模そのものより、巨大化した売上をどこまで利益に変えられるかです。その点こそ、3カ月前に株式市場が疑っていた問題でした。

上方修正の5月決算で市場が失望した理由

トライアル株は2026年春まで高値圏で推移していました。4月8日には年初来高値4840円をつけています。

ところが、5月14日に第3四半期決算を発表すると状況が一変します。第3四半期累計の売上高は1兆36億円、営業利益は前年同期比70.4%増の229億円。会社は通期営業利益予想も254億円から280億円へ上方修正しました。数字だけを見れば好決算です。それでも翌15日の株価は700円安の3,570円となり、ストップ安。その次の取引日となる18日も659円安の2,911円まで急落しました。

なぜでしょうか。最大の理由は、「上方修正したかどうか」ではなく、「市場が期待していた利益水準に届いたか」でした。営業利益予想280億円に対し、市場では310億円前後を見込む声がありました。会社予想は上方修正されたものの、市場期待には届かなかったのです。さらに第3四半期時点では、西友買収によって売上高が大幅に増えているにもかかわらず、「利益がどこまで付いてくるのか」が見えにくい状況でした。

通期売上高予想は1兆3425億円まで引き上げられた一方、営業利益は280億円。売上高営業利益率は約2.1%にとどまります。加えて、西友買収に伴う借入金の利息やのれん償却、M&A関連費用も利益を圧迫しました。

つまり市場は、「西友を買って会社は巨大になった。しかし、本当に稼げる会社になったのか」と疑っていたわけです。売上高1兆円というニュースだけでは、株価を押し上げらることはできなかったのです。

「売上増」から「利益改善」へ

では、8月13日の本決算では何が変わったのでしょうか。

まず、5月に修正した会社予想をさらに上回りました。5月時点の通期予想は売上高1兆3425億円、営業利益280億円、経常利益173億円、純利益5億円でした。実績は売上高1兆3471億円、営業利益303億円、経常利益201億円、純利益35億円。営業利益は計画を23億円、経常利益は29億円近く上回りました。純利益は計画5億円に対して35億円と大幅な上振れです。

会社側は、売上高と売上総利益が想定以上に堅調だったことに加え、特別損失が予想を下回ったことを理由に挙げています。さらに重要なのが、西友の改善です。

決算説明資料によると、西友は従来の「収益性重視」から顧客支持を高める経営へ転換。既存店客数は1月以降、前年同月比5%超の増加が続き、5月には10%を超える伸びとなりました。第4四半期の西友の売上総利益率は27.2%まで改善。通期営業利益率も計画を0.5ポイント上回る3.0%で着地しました。

ここが5月決算との大きな違いです。5月時点では「西友を買ったから売上が増えた」という段階でした。8月決算では、「西友の客数が戻り、粗利益率も改善し、買収効果が数字として見え始めた」という段階に進みました。

トライアル本体も、惣菜やPB商品、価格戦略などによって収益力を高めています。連結売上総利益率は前期から3.3ポイント上昇して23.8%となりました。市場が評価したのは、売上1兆円ではなく、「売上を利益に変えられる可能性が高まったこと」だったと考えられます。

急騰した株価は4840円まで戻るのか

そして、さらに市場を安心させたのが2027年6月期の会社予想です。売上高は前期比8.2%増の1兆4,582億円、営業利益は28.4%増の390億円、経常利益は41.7%増の286億円、純利益は約3倍の107億円を見込んでいます。営業利益390億円が実現すれば、2期連続で過去最高を更新します。

この見通しを受け、8月14日の株価は前日比10%を超える上昇となりました。5月15日のストップ安とは正反対の反応です。ただし、これで株価が4月の年初来高値4840円へ一直線に戻ると考えるのは早いでしょう。

トライアルには西友買収に伴って約2920億円ののれんが計上され、短期借入金も大幅に増加しました。総資産は3003億円から8078億円へ膨らみ、自己資本比率は42.0%から16.2%まで低下しています。買収資金については2026年7月に3674億円のシンジケートローンへ借り換えました。今後は西友とのシナジーで利益とキャッシュフローを増やしながら、負債を減らせるかが重要になります。

さらに、2027年6月期、西友では人員体制強化など成長投資を増やすため、一時的な減益を見込んでいます。その一方、トライアル本体の粗利率改善と統合シナジーで連結営業増益を目指す計画です。

したがって、今後の株価を左右するポイントは売上高ではありません。西友の客数回復が続くか、粗利益率をさらに改善できるか、営業利益390億円を達成できるか、そして巨額買収で増えた負債を減らせるか。5月の市場は「1兆円企業になっても利益が伸びないのではないか」と疑いました。

8月決算は、その疑問に対して初めて具体的な答えを示した決算だったといえます。トライアル株が本格的に高値を取り戻すために必要なのは、売上1兆円という規模ではありません。西友買収によって「大きくなった会社」が、「より稼げる会社」に変わったことを証明できるかどうかでしょう。

文=KIJIKUL編集部
※本記事は情報提供を目的として作成したものであり、特定の企業、商品、サービス、金融商品、投資その他の取引を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容は記事公開時点の公開情報等に基づいており、意見・見解・予測などは執筆者または編集部の判断によるもので、予告なく変更される場合があります。内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、最終的な判断はご自身の責任において行ってください。【KIJIKUL編集部】

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