「社内副業」って何?コニカミノルタが正式導入で注目される人事制度の効果

※写真はイメージです。

コニカミノルタが2026年7月、所属部署に籍を置いたまま他部門の仕事に取り組む「社内副業」を正式導入しました。専門性を生かして月20時間の案件に参加すると、通常の給与とは別に10万円の手当が支給されます。狙いは社員教育だけではありません。採用や異動では対応しにくい専門人材の不足を補い、社内に眠る知識や経験を成果につなげることです。

月20時間で10万円、研修とは違う狙い

新しい業務を始めたいのに、専門知識を持つ人が部署にいない。採用するほどの仕事量ではなく、外注するにも依頼先探しや説明に時間がかかる。企業の現場では、こうした小さな人材不足が業務改善や新規事業を止めることがあります。

コニカミノルタが導入した「スキルシェア制度」は、この隙間を社内の人材で埋める仕組みです。同社が2026年8月24日に公表した資料によると、事業の変革やDXの進展に伴い、専門人材の不足と、短期的に発生する高度なスキルへの需要が課題になっていました。

そこで、社員が所属組織にとどまりながら、本人の意思で他部門の仕事に参加できるようにしました。案件は1件当たり月20時間以内、期間は3カ月以内。部門が募集した仕事に社員が応募する方式と、スキルを持つ社員に声をかける方式があります。

2026年10月26日付のITmediaの記事によると、月20時間の案件には10万円、10時間には5万円、5時間には2万5000円の追加手当を支給します。費用を負担するのは仕事を依頼する部門です。年齢や給与等級によらず、参加時間に応じて同じ基準を適用します。

重要なのは、未経験の仕事を学ぶ研修とは目的が異なる点です。同社の制度は、社員がすでに持つ専門性を使い、依頼先の課題を解決することを重視しています。その経験が、結果として本人の成長にもつながる設計です。

通常業務の成果や品質を維持することが前提で、本業の時間を減らす仕組みではありません。応募前に所属部署の上司の承認を得たうえで、本人、所属部署、依頼部門が業務内容などを確認します。

社外副業との違いは「会社の境界」

社外副業では、社員が他社で働いたり、個人で仕事を請け負ったりします。収入の確保に加え、社内では得にくい経験や人脈を築けることが魅力です。一方、会社には情報管理や本業への影響を確認する必要が生じます。

社内副業は、同じ会社の中で仕事の範囲を広げます。社員は会社を辞めたり異動したりせず、新しい役割に挑戦できます。企業側も、社内の事情を理解する人に依頼できるため、仕事の背景を共有しやすい利点があります。

ただし、「社内副業」という名称でも、働く時間や報酬の扱いは一律ではありません。

例えば、KDDIは2020年6月から就業時間の約2割を目安に、所属部署以外の仕事を経験できる制度を導入しました。専門性の探索や習得、部門を越えた協働による新しい価値の創出を狙ったものです。本業に充てる時間を減らさず、追加業務に取り組むコニカミノルタの方式とは、時間の配分が異なります。

また、通常の兼務との違いも整理が必要です。会社が人員配置として命じる兼務に対し、社内副業では本人が関心や専門性を踏まえて参加を選ぶ点が特徴になります。名前だけを変え、上司が一方的に仕事を増やせば、社員には単なる負担増と映るでしょう。

導入前に決めるべきなのは、制度名よりも目的です。即戦力の活用なのか、未経験分野への挑戦なのかによって、募集する仕事も支援の方法も変わります。

意外な効果は「送り出す部署」にも

社内副業を導入する会社の狙いは、限られた人材の力を全社で使えるようにすることです。ある部署では日常的に使っている知識が、別の部署では得難い専門性になる場合があります。

コニカミノルタは公表資料で、2025年からの試行を通じ、仕事の成果や品質を保ちながら、事業のスピード向上や外部委託費の抑制といった効果を確認したとしています。。本業への影響も限定的だったとしています。

前述のITmediaの記事によると、2回の試行では36件の依頼のうち27件でマッチングが成立しました。また、専門家に短時間だけ相談したいという需要が分かり、月5時間の枠も加えました。まとまった作業を頼むだけでなく、知見を借りる使い方にも価値があったのです。

さらに、注目したいのは、社員を送り出す所属部署への効果です。参加社員が他部門で得た知見を自分の部署で共有するなど、上司にとっても満足度の高い結果が見られたといいます。

これは、社内副業が一方的な人材の貸し出しで終わらない可能性を示します。他部門の仕事を知った社員が、元の部署の進め方を見直すきっかけを持ち帰れるからです。

社員にとっても、自分の得意分野が別の場所で役立つ経験は、能力を見つめ直す機会になります。社内で自分の力を発揮できる機会が増えれば、働きがいの向上も期待できます。ただし、離職率の低下や業績への長期的な効果まで確認されたわけではなく、継続的な検証が必要です。

中小企業は「小さな課題」から始める

中小企業にも社内副業は必要なのでしょうか。全社一律の制度を整えることが、すべての会社に必要とは限りません。すでに部署を越えて柔軟に助け合えている会社なら、既存の仕組みを改善する方が早いでしょう。

一方、部署ごとに仕事を抱え込み、社員の得意分野が十分に知られていない会社には、試す価値があります。採用を増やしにくい会社ほど、今いる社員の力を見直す意味は大きいからです。

最初は、例えば「営業資料の改善」「表計算による集計作業の見直し」など、成果を確かめやすい仕事を一つ選びます。依頼内容、必要なスキル、成果物、期限、使える時間を簡単に書き出し、希望者を募ります。社員の特技や前職での経験を聞き取るだけでも、意外な候補が見つかる可能性があります。

試行は1~3カ月程度とし、最初から専用システムを導入する必要はありません。既存の社内掲示板や共有表でも、少人数なら運用できます。

大切なのは、参加時間を確保することです。所定労働時間の一部を使うなら、通常業務の量や分担、目標を調整し、参加時間を確保する必要があります。追加業務とする場合も、本人の意欲だけに頼らず、会社全体で労働時間を把握しなければなりません。厚生労働省のガイドラインも、使用者による適正な労働時間の把握を求めています。

報酬は大企業の金額をそのまま採用するのではなく、自社の賃金・評価制度に合わせて設計する必要があります。参加者だけでなく、教える社員や仕事を調整する上司の協力も評価することが、不公平感を抑えるうえで重要です。

終了後は、作業時間がどれだけ減ったか、成果物が使われたか、本業への負担はどうだったかを振り返ります。参加を強制せず、負担が大きければ中断できる条件も決めておきます。

社内副業を機能させる鍵は、社員の能力と社内の課題を結びつけることです。まずは「困っている仕事」と「力を貸せる人」を見えるようにする。その小さな取り組みが、人手不足への対応と社員の成長を同時に進める出発点になります。

文= KIJIKUL編集部
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