社長辞任・1兆円減損報道でストップ安!ニデックは不正会計から再建できるか

ニデックが再び大きく揺れています。岸田光哉社長の解任決議と「1兆円規模」の減損損失が報じられ、2026年9月28日の株価は前営業日比17.6%安の2340円とストップ安で引けました。会社側は役員変更と大規模減損を「検討している」と認める一方、決定した事実はないと説明しています。しかし、2026年3月期の有価証券報告書はいまだ提出されず、翌期の第1四半期決算も未開示のままです。

「社長解任」「1兆円減損」報道で株価ストップ安

ニデックを巡る混乱が、新たな局面を迎えました。ダイヤモンド・オンラインは2026年9月28日、ニデックが25日の臨時取締役会で岸田光哉社長の解任を決議したと報じました。さらに、不正会計問題を受けて2026年3月期に「1兆円規模」の減損損失を修正計上する方針とも伝えています。

これに対し、ニデックは同日、「役員変更及び大規模な減損処理について検討をしているのは事実」と認めました。ただし、「現時点で当社として決定した事実はございません」としており、社長解任と1兆円規模の減損は、会社が正式決定した事実としては確認されていません。

その後、日本経済新聞は9月29日未明、岸田光哉社長が辞任の意向を固めたと報道。EV関連や会計不正に伴って数千億円規模の減損損失を計上する見通しで、社外取締役を中心とする取締役会が経営責任を明確にする方向だとしています。後任候補には戒田理夫専務執行役員の名前も挙がっています。

市場は敏感に反応しました。9月28日のニデック株は前営業日終値2840円から500円、17.61%下落し、2340円のストップ安で終了。出来高は約2803万株まで膨らみました。ただ、問題は株価急落そのものではありません。

ニデックが訂正や減損を反映した2026年3月期の最終的な財務状況をいまだ市場に示せていないところに、トップ交代と巨額減損という新たな問題が重なったことです。

2026年3月期の有報も提出できない異常事態

現在のニデックの経営状況を象徴するのが、決算開示の遅れです。2026年3月期の有価証券報告書は、本来なら6月30日が提出期限でした。しかし、会社は期限延長を申請し、9月30日までの提出を予定しています。

さらに、2027年3月期第1四半期決算短信も開示できていません。ニデックは8月5日、過年度決算の訂正や2026年3月期決算に向けて、連結財務諸表への影響額の確定、のれん・固定資産の減損損失の追加計上の要否、税金費用などを検討していると説明しました。品質問題や関税問題についても調査が続いており、監査を含めて相当な時間が必要だとしています。

そのため2026年3月期決算だけでなく、次の2027年3月期第1四半期決算まで開示が遅れるという異例の状態になっています。

直近で開示されている2026年3月期中間期を見ると、売上高は前年同期比0.7%増の1兆3023億円と過去最高でした。一方、営業利益は82.5%減の211億円、親会社の所有者に帰属する中間利益は58.6%減の312億円でした。特に深刻なのが車載事業です。中間期の車載事業は売上高3359億円に対し、営業損失が828億円に達しました。契約損失引当金365億円、非金融資産の減損損失317億円、仕入先との和解に伴う債務195億円などが響いています。

つまり、減損問題そのものは突然浮上したものではありません。ただし、今回報じられた「1兆円規模」が事実なら、これまで想定されていた水準を大幅に上回ります。車載事業などで積み上がった資産の価値をどこまで見直す必要があるのかという問題が、以前から決算確定を難しくしていたのです。

仮に「1兆円規模」が事実なら、これまで想定されていた水準を大幅に上回ります。減損は基本的に過去の投資判断や買収価格、事業計画の前提を現在の収益力に照らして見直す処理です。巨額減損はキャッシュが同額流出することを意味しませんが、過去の成長投資の妥当性が厳しく問われることになります。

永守氏が去り、再建を担う岸田氏まで交代か

ニデックの問題を「岸田社長の経営責任」だけで説明すると、本質を見誤る可能性があります。

第三者委員会は、ニデックが創業者・永守重信氏の強力なリーダーシップによって成長した一方、グループの巨大化に伴い、トップへの権限集中とマイクロマネジメントに「歪み」が生じたと指摘しています。また、トップダウンで設定された厳しい業績目標と達成へのプレッシャーが、一連の会計不正につながったと認定しました。

永守氏は2025年12月に代表取締役グローバルグループ代表を辞任して名誉会長となり、2026年2月にはその名誉会長も辞任しました。その後、再建を担ったのが岸田氏です。岸田氏は従来のトップダウン型経営からの転換を進め、各事業が自ら事業計画を組み立てる方向へ改革を進めていました。ニデック自身も「ガバナンス体制の抜本的な刷新とコンプライアンス意識の徹底」を最優先課題に掲げています。

現在の取締役会は社内取締役3人に対し社外取締役10人という構成です。ニデックは独立社外取締役の比率を大幅に高め、取締役会による監督機能の強化を進めています。

その社外取締役主体の取締役会が岸田氏の交代に動いているとすれば、ガバナンスが機能し始めたと見ることもできます。一方で、再建途中でトップを交代させれば、改革の継続性が失われるリスクもあります。

問題は「岸田氏を辞めさせるか、続投させるか」だけではありません。創業者に依存してきた会社が、誰か一人のカリスマに頼らなくても経営できる仕組みを作れるのか。それこそがニデックの再建を左右します。

不正会計のニデックは本当に再建できるのか

では、ニデックは再建できるのでしょうか。悲観材料ばかりではありません。精密小型モーターなど本業の競争力が突然失われたわけではなく、2026年3月期中間期の精密小型モーター事業は営業利益349億円と前年同期比20.0%増益でした。家電・商業・産業用でも573億円の営業利益を確保しています。

つまり、ニデックには、「事業そのものの再建」と「企業統治の再建」という二つの課題があります。

前者では、赤字化した車載事業をどこまで整理し、過去の投資や資産を適正な価値まで落とせるかが焦点です。後者では、創業者の意向や短期的な業績目標に左右されず、現場から上がってくる数字を取締役会や監査部門が検証できる体制を作らなければなりません。

巨額減損も、見方を変えれば過去の負の遺産を一括処理する契機になり得ます。ただし、それが再建の「最終処理」なのか、さらに問題が出てくる途中段階なのかは、現時点では判断できません。

9月28日に会社が「1兆円規模の減損」を正式決定したとは認めなかったことも重要です。今後の最大の焦点は、9月30日を提出期限としてきた2026年3月期有価証券報告書です。そこで最終的な減損額や財務への影響、監査法人の意見がどう示されるのか。そして、誰が次の経営トップとなり、再建の責任を負うのか。

ニデックが必要としているのは、新たな「カリスマ経営者」ではないでしょう。経営トップが代わっても不正を防ぎ、適切な数字に基づいて意思決定できる会社へ変われるか。9月28日のストップ安は、巨額減損の可能性に加え、トップ交代を含む経営体制の先行きに対して、市場の警戒感が強まった結果とみられます。

文=夏樹真生(経済ジャーナリスト)
※本記事は情報提供を目的として作成したものであり、特定の企業、商品、サービス、金融商品、投資その他の取引を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容は記事公開時点の公開情報等に基づいており、意見・見解・予測などは執筆者または編集部の判断によるもので、予告なく変更される場合があります。内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、最終的な判断はご自身の責任において行ってください。【KIJIKUL編集部】

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