新商品が売れない会社の共通点!中小企業の経営者が陥る「3つの落とし穴」

「こんなにいい商品なのに、なぜ売れないのか」――。新商品や新事業が失敗する原因は、商品力や営業力だけにあるとは限りません。伝説の経営コンサルタント・一倉定氏は、相談に来た社長に「一倉はあんたのお客じゃない。お客様のところに行って聞いてこい」とカミナリを落としました。顧客に聞かない、失敗しても損切りできない、現場を社員任せにする。中小企業の経営者が陥りやすい「3つの落とし穴」を考えます。
第1の落とし穴「お客様に聞かない」社長
新商品や新事業の相談で経営コンサルタントの一倉定先生のカミナリが落ちることは日常茶飯事でした。試作品や完成した品物を持ち込み、一倉先生の意見を聞こうとする社長の心情は「なかなかいいね」や「こうしたら売れるよ」を聞きたいのがホンネであり、あわよくば販売先を紹介していただけないか、とまで思っています。
それを見透かしたかのように先生は、「一倉はあんたのお客じゃない。そんなことがわかるか!」と一喝。続けて、「お客様のところに行って聞いてこい」と怒鳴られます。
ところが、ベテラン社長には、これがなかなかできません。過去にヒット商品をいくつも出していればなおさらできなくなります。
自信も実績もあるから、俺の目に狂いはないと思い込み、自分の好みをお客様に押し付けようとします。売れなければ、「営業は何をやってるんだ!」と社内に発破をかけます。営業マンや店頭の担当者は、お客様の反応を直接見聞きしているため、売れない理由を何となくわかっていますが、なかなか社長に本当のことを言えるものではありません。
お客様にとっては社長が作ろうが、有名デザイナーが手掛けようが関係ありません。良いと思えば買うし、嫌なら買わないだけです。
確かにヒット商品の第二弾や、有名企業、老舗の新商品は期待を込めて1回は買ってみます。食べたり、試したりして良ければ再購入につながり、売上も伸び定番商品に育っていきます。しかし、期待ほどでなければ初期出荷後、リピートオーダーが入らなくなります。自信を持って市場投入しただけに、社内では「広告宣伝が足りない」「営業が足りない」「やる気がない」「口コミを仕掛けられないか」など、さまざまな意見が飛び交います。
昨今では、InstagramやYouTubeなどで紹介され、一気に火がついても、お客様に本当に支持されなければブームは長続きしません。類似品や代替商品も市場に一気にあふれるため、商品の寿命はさらに短くなります。最後には、「あれが悪い、これが悪い」の犯人探しが一巡し、「いい商品をわからないお客が悪い」の発言まで飛び出してきます。
第2の落とし穴「失敗を損切りできない」社長
昔から「センミツ(千のうち三つしか成功しない)」という言い方がありますが、さすがに新商品の成功確率が1000分の3では経営は維持できません。一概には言えませんが、10%の生存率なら合格、20%も新商品がヒットすれば驚異的ともいえるでしょう。新事業が収益の柱に育つ確率はもっと低いものです。巨費を投じて開発体制を持ち、市場調査を繰り返している大企業でさえ連戦連勝はあり得ません。
逆に言えば、10品の商品を市場投入しても8~9品は生き残らないし、1つの新商品、新事業を成功させるために、傷口が大きくなる前に損切りしなくてはなりません。
しかし、中小企業では頭ではわかっていてもこれがなかなかできません。理由は、大きく3つあると思います。1つには、累損額や単月黒字になるまでの期間の基準が全社の共通ルールとして決まっていないこと。こういう指摘をすると、必ずと言っていいほど、「最初からそんな弱気でどうする!」「松下翁も成功するまでやり続ければ、失敗はないんだ!と言っているではないか」との反論が聞こえてきそうです。
次に、サンクコスト(埋没費用)へのこだわりです。「すでに5000万円突っこんだんだから、後には引けない」「あと1000万円宣伝に資金を投入すれば売れ始める!」「あと1年やらせてほしい」等々、気持ちはよくわかりますがずるずると時間と資金を使い、気がつけば赤字がもっと大きくなっているのです。
さらに、悪いことにその商品や新事業が社長の肝煎りでスタートし、社長の息子さんがリーダー・発案者となってプロジェクトが始動している場合です。投入予算に歯止めがかからなくなることも少なくありません。
一倉先生の言うところの「社長の我の申し子商品」であり、日頃は冷静な社長でも、メンツとプライドが掛かっているだけに、どんなにお金と人と時間を使ってでも成功させようと努力します。社員を含め傍目から見れば「即撤退」が正しくても、社長からすれば、巨費を投じているだけに「せめて元を取らねば」という思いが強く、撤退の決断を先送りにしてしまいます。
社長を止められるのは社長自身か、社長が尊敬する人からの苦言だけです。こういう状況での一倉先生のカミナリは尋常ではありません。社長自身が慢心し、自分や会社を中心に物事を考える「天動説経営」に陥り、お客様が不在になっていることと、会社の命脈である資金に黄信号が点灯し始めるからで、一切の言い訳を許さないで「即答」を求めます。
第3の落とし穴「現場を社員任せにする」社長
あるとき、新事業の相談があるとのことで連絡が入り、詳細を聞きに行ってきましたが、相談の趣旨は「どのように売ったらいいか?」「どこに売ったらいいか?」で、既に億単位の開発費は投入済みでした。
「そんなバカな!」と思われるかもしれませんが同様の問い合わせは、年に何件も入ってきます。「こんなのを造ってみたが、卸先を紹介してほしい」「この技術は画期的で、世界がひっくり返るぞ!」等々、社長は大真面目に開発していますが、お客様や用途が見えない珍製品の山です。まるで町の発明家のような社長もいらっしゃいます。
先ほどのセンミツではありませんが大化けする製品がないとは限りませんが、大企業の基礎開発なら許されても中小企業には金食い虫の仕事は向きません。用途開発、応用開発、ヨコ展開など、お客様の困りごとや要望をしっかり捉えて商品開発すべきなのですが、一倉先生と社長の会話の中で「お客様の姿が感じられない、見えない」とやはり巨大なカミナリが落ちます。
一倉先生曰く、「「穴熊社長のバカッタレ!」「そんなことは、一倉に聞かないでお客様のところに自分で行って直接聞け!」「営業マンの報告で現場の本当のことがわかるか!」と凄い剣幕です。本来、社長がやらなければならない一番大事な仕事をやらないで、社員任せ、他人任せにしている言動こそが「カミナリスイッチ」の起爆ボタンなのです。
しかし、一倉先生は実は社長に怒っているのではありません。

一倉先生が批判したのは、アメリカで発展した「内部管理学」や「人間関係論」「大企業の組織論」を、中小企業にもそのまま当てはめようとする経営論でした。一生懸命勉強し、正しいと信じている中小企業の社長に、「目を覚ませ!」とばかりにカミナリを落とすのです。
それが証拠に多くの社長は「なにクソっ!」とばかりにお客様を回り始め、小さなことから仕事のやり方、お客様サービスを改良し、新商品のテストを行い、高評価をいただいたことを、全社、全お客様に広げ業績を伸ばし始めます。
当然ながら、社長は途中報告や結果報告を一倉先生に伝えて、次の一手を相談しますが、先生は満面の笑みを浮かべて「良かったね~」と、我がことのように喜んでいます。あの剣幕で怒鳴ったことなど忘れているに違いありません。まあ、あれだけ怒っていると、どこで誰に怒鳴ったかも覚えていないでしょう。
ただ、怒鳴られた社長は「あれだけ真剣に自分のために怒ってくれた!」「あれが自分の転機だった」と皆さん述懐します。
業績が伸びれば、誰よりも社長が一番喜びます。だからこそ「穴熊社長」を卒業し、お客様への訪問を重ね、ニーズを探りながら新商品や新事業のテストを繰り返す。その積み重ねによって事業領域を広げ、目を見張る成長を実現できるのです。
※本稿は作間信司著『伝説の経営コンサルタント 一倉定の社長学』(プレジデント社/2019年11月29日刊)から一部を抜粋し、再編集したものです。
文=作間信司(日本経営合理化協会専務理事/執筆時)
作間信司(さくま・しんじ)
1981年、明治大学経営学部卒業後、大手インテリア会社にて販売戦略などの実務経験を積んだ後、1983年、日本経営合理化協会入協。事業の企画・立案を担当する傍ら、会長牟田學の薫陶を受け、全国の中堅・中小企業の経営相談に携わる。以来、40年以上の豊富な指導経験からオーナー経営者との親交も非常に広く、その親身のコンサルティングに多くの社長が全幅の信頼を寄せる。メーカー・商社・小売・サービス業など、現在まで300余社を指導する気鋭のコンサルタント。
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