ナブテスコ株は高値から約4割安!「フィジカルAI」本命でも買われない理由

ロボットの「関節」を支えるナブテスコの株価は、2026年11月6日に前日比8.04%安の3729円で引け、5月の高値から約4割下落しました。中間期の営業利益は約7割増え、政府はフィジカルAIに2040年度までに10.5兆円の官民投資を見込んでいます。それでも株価が低迷するのはなぜでしょうか。東京市場全体が急落した影響と、既存事業の増益が新製品の収益化にどこまでつながるかを分けて考えます。
11月6日に8%安、5月の高値から39%下落
ナブテスコの2026年11月6日の終値は3729円と、前日比326円(8.04%)安でした。11月4日は2.71%安、5日も2.69%安で、3営業日で12.9%下落しました。5月14日の取引時間中につけた高値6113円と比べると、下落率は39.0%に達します。
11月6日の東京市場ではAI・半導体関連株が売られ、日経平均株価は前日比3643円13銭(5.96%)安の5万7434円77銭で引けました。米中間選挙で民主党が上下両院の多数派を奪還するとの見方が強まるなか、AI投資の持続性にも警戒が広がっています。ナブテスコの下落率は同日の日経平均を上回りましたが、その差から個別の売り材料まで特定することはできません。
ナブテスコ株の下落は5月から続いています。11月の選挙結果で説明できる範囲は限られます。発電や冷却設備を伴うデータセンター投資と、工場で人手を補うロボット投資では、導入企業も投資判断も異なります。選挙後の市場の動揺が、同社の受注にどう波及するかは今後の確認が必要です。
フィジカルAIとは、現実の環境を認識し、状況に応じて機械を動かす技術です。従来型の産業用ロボットに使う部品の売上が伸びても、それだけでAIを搭載した新型ロボットの普及が進んだとは判断できません。中間決算が示した既存事業の回復と、株価が織り込む将来の需要には時間差があります。

営業利益7割増、ロボット以外も業績を支える
9月30日に訂正した2026年1~6月期の連結決算では、売上高は前年同期比16.8%増の1674億100万円、営業利益は69.4%増の157億5900万円でした。通期の会社予想は売上高3440億円、営業利益326億円です。
精密減速機を含むコンポーネントソリューション事業は、売上高が23.6%増の455億2100万円、営業利益が160.8%増の48億4100万円でした。会社が挙げた需要の中心は、中国や韓国の自動車メーカー向け産業用ロボットや一般産業です。増益が翌期以降も続くかを見るには、ロボットメーカーの受注に加え、価格転嫁や収益性改善の効果も確認する必要があります。
同事業が連結売上高に占める割合は約27%で、ここには精密減速機以外の製品も含まれます。航空機や船舶向けの機器、自動ドアもグループの収益を支えています。ロボット向け部品の成長が全社利益をどれだけ押し上げるかは、他事業の動きにも左右されます。
業績と並んで確認したいのが、財務報告に関する内部統制です。同社は9月30日、一部の持分法適用関連会社について、傘下の子会社を含む財務情報を十分に把握できず、持分法による投資利益などを過少計上していたと公表しました。第3四半期決算は、監査人による期中レビューへの対応に伴い、10月30日から11月13日に発表予定日が変更されました。利益の伸びとともに、関連会社から取得する財務情報の確認手順をどう改めたかも焦点です。
世界シェア約6割!小型ロボットでも強みを生かせるか
精密減速機は、モーターの回転を落として力を増し、ロボットの腕を狙った位置に動かす部品です。
ナブテスコは、中大型産業用ロボットの関節に使われる精密減速機で、世界シェア約60%を持つと推計しています。重い部材を運ぶ腕を繰り返し正確に止めるには、関節の剛性や耐久性が欠かせません。長年の量産や品質管理の経験は、こうした用途で競争力を支えます。
一方、人のそばで働く協働ロボットや人型ロボットでは、関節の寸法や重さ、価格への要求が変わります。中大型機で選ばれてきた部品メーカーでも、新しい機種では設計段階から採用を勝ち取る必要があります。AIの学習基盤や制御ソフト、センサーなどの組み合わせも、完成品の競争力を左右します。
ナブテスコは、小型・軽量の減速機「RVmini」を投入し、協働ロボットや産業用ロボットの手首軸などに用途を広げようとしています。部品が試作機に採用されてから量産発注に至るまでには、完成品の性能評価や安全性の検証が必要です。新製品の評価が継続的な注文に変わり、売上高だけでなく利益にも寄与するか。既存市場のシェアからは読み取れない部分です。
10.5兆円の官民投資、株価回復につながる条件
政府の官民投資ロードマップでは、フィジカルAI分野で2040年度までに10.5兆円の官民投資を見込んでいます。工場や物流、介護などへの導入を想定した長期の投資規模で、民間による投資も含まれます。この数字からナブテスコの売上高を見積もるには、ロボットの導入台数や同社製品の採用率などを見極める必要があります。
人手不足は自動化を後押ししますが、導入企業が量産機の購入に踏み切るには、設置費や保守費を含めても投資を回収できる見通しが必要です。例えば物流現場で荷物を扱うロボットなら、実証実験で作業に成功した後も、繁忙期の処理量に対応できるか、故障時に現場をどれだけ早く復旧できるかが問われます。その結果が複数拠点への導入や、減速機の継続発注につながります。
株式の需給では、会社が10月末までに約150億円の自己株式取得を終えた点も材料の一つです。取得期間中は会社自身が買い手となっていました。取得終了後の株価を読む際には、市場全体の動きと、こうした買い需要の変化を分けて見る必要があります。
会社予想の1株当たり利益206.20円を使うと、11月6日終値3729円での予想PER(株価収益率)は約18.1倍です。その水準を評価するには、今期の利益を達成できるかに加え、来期以降も伸ばせるかが重要です。
11月13日の第3四半期決算では、既存の産業用ロボット向けの受注が続いているか、小型減速機の採用が量産に近づいているか、工場の稼働率や採算が改善しているかに注目です。国策への期待を持続的な株価回復につなげるには、新しい用途で受注を積み上げ、利益を生み出せることを示す必要があります。
文= KIJIKUL編集部
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