業績絶好調でも株価は大幅下落!「AI関連株」村田製作所に何が起きたのか

AIサーバーやデータセンター向け需要の拡大を追い風に、村田製作所の業績が急拡大しています。2027年3月期第1四半期は売上収益が20.7%増、営業利益は59.8%増。通期予想も上方修正しました。ところが、AI関連株として急騰した株価は高値から大きく下落しています。世界トップクラスのシェアを持つ電子部品メーカーに何が起きているのでしょうか。
売上収益2兆円へ!業績絶好調でも株価は大幅下落
村田製作所の業績が急拡大しています。2027年3月期第1四半期(2026年4~6月期)の連結決算は、売上収益が前年同期比20.7%増の5022億6400万円、営業利益が59.8%増の984億5400万円、税引前利益が75.3%増の1092億3300万円、純利益が63.7%増の813億7700万円でした。営業利益率も前年同期の14.8%から19.6%へ上昇しています。
しかも、会社側は第1四半期決算と同時に2027年3月期の業績予想を上方修正しました。4月時点では売上収益1兆9600億円、営業利益3800億円を予想していましたが、売上収益2兆1100億円、営業利益4300億円へ引き上げました。前期比では売上収益15.2%増、営業利益52.6%増となる計画です。純利益も3380億円を見込んでいます。
前期の2026年3月期も決して悪くありません。売上収益は前期比5.0%増の1兆8308億5600万円と過去最高を更新し、営業利益は0.8%増の2818億3500万円でした。つまり、今期はその最高売上をさらに大幅更新し、初の売上収益2兆円台を見込んでいるのです。
ところが、株価は業績とは違う動きをしています。AIデータセンター関連への期待から上昇した後、高値から大幅に調整しています。ここで重要なのは「業績が悪くなったから株価が下がった」という単純な構図ではないことです。
むしろ、村田製作所の場合は、業績が好調だからこそ株価が先に将来を織り込み、その期待が大きくなりすぎた反動を考える必要があります。

なぜ村田製作所は「AIデータセンター関連株」なのか
村田製作所といえば、スマートフォンに使われる電子部品メーカーというイメージが強いかもしれません。ところが、現在の成長を牽引しているのはAIサーバーやデータセンターです。
その中心にあるのが、積層セラミックコンデンサ(MLCC)です。コンデンサは電気を蓄えたり、電圧を安定させたりする電子部品で、スマートフォン、自動車、パソコンなど幅広い製品に大量に搭載されています。AIサーバーは、高性能GPUなどを動かすために大量の電力を消費します。AIサーバーの高性能化や消費電力の増大が進めば、電源を安定させるために使われる電子部品の重要性も高まります。
村田製作所自身も、2026年3月期について「サーバー向けを中心に幅広い用途でコンデンサが増加」したことが過去最高売上につながったと説明しています。
さらに、会社側は2026年度のデータセンター関連コンデンサの売上高を前年比85~90%増と想定し、コンデンサについて約800億円の追加設備投資を実行する計画を打ち出しました。2026年度と2027年度に、それぞれ約400億円を投じる予定です。
そして、第1四半期はそのシナリオに沿って成長しました。会社によると、データセンター関連投資の拡大を背景に電子部品需要が堅調に推移し、コンデンサはデータセンター向けを中心に増加。EMI除去フィルタもデータセンター向けなどで伸びています。
つまり、村田製作所は、AI半導体そのものを製造している会社ではありません。しかし、AIサーバーを動かすために欠かせない電子部品を供給する「AIインフラの裏方」として存在感を高めているのです。会社側も中期戦略でAIサーバーを中心としたITインフラ市場を成長領域に位置付けています。
世界トップクラスの競争力でも株価が下がるワケ
では、業績が絶好調で、AIという成長市場を抱える村田製作所の株価がなぜ高値から大きく下落したのでしょうか。最大のポイントは、「現在の業績」と「株価が織り込んでいる将来」を分けて考えることです。株式市場が期待していたのは、第1四半期の増収増益だけではありません。
「AIデータセンター投資が急拡大する」
→「高性能サーバーが大量に増える」
→「MLCCなど電子部品の需要が増える」
→「村田製作所の生産量と利益が急増する」
という数年先までの成長シナリオです。
実際、村田製作所は第1四半期を受けて、2027年3月期のコンデンサ売上収益を前期比23.6%増の1兆1575億円と予想しています。コンピュータ向け売上収益に至っては61.7%増の5020億円を見込んでいます。会社が追加投資に踏み切っていることからも、需要拡大への強い見通しがうかがえます。
一方で、AIデータセンターへの巨額投資が今後も現在のペースで拡大し続けるとは限りません。データセンター建設には半導体だけでなく、電力、送電網、冷却設備など巨大なインフラが必要です。AI投資が一時的に減速すれば、高い成長を先取りして買われた関連株ほど株価調整が大きくなる可能性があります。
さらに、村田製作所はAIだけの会社ではありません。2027年3月期予想では、コンピュータ向けが大幅に伸びる一方、通信向けは1.7%増、家電向けは9.7%減を見込んでいます。高周波・通信事業も3.7%減収の予想です。
つまり、AI関連需要が急拡大していても、スマートフォンなど既存市場を含む巨大企業全体が同じ速度で成長するわけではありません。「村田製作所の業績が悪い」のではなく、「AI関連株として株価に織り込まれた成長期待が高すぎた」可能性を見る必要があるのです。
大幅下落した村田製作所株、今後の焦点は?
では、高値から大幅に下落した村田製作所株は買い時なのでしょうか。
まず、業績面では成長シナリオが崩れたとは言いにくいでしょう。2027年3月期第1四半期の営業利益は59.8%増。通期営業利益予想は3800億円から4300億円へ引き上げられました。設備投資も従来計画から増やし、2550億円を予定しています。
財務基盤も厚く、2026年3月末の親会社の所有者に帰属する持分比率は85.0%。現金及び現金同等物は6537億円に達しています。株主還元についても増配を進めています。2026年3月期は期末配当を30円から35円へ増額し、年間65円としました。2027年3月期は年間70円を予想しています。
ただし、株価が高値から大きく下落したことだけを理由に「割安」と判断するのは早計です。今後の株価を見るうえで確認したいポイントは三つあります。第一に、AIデータセンター向けコンデンサ需要が会社計画通り拡大するか。第二に、800億円規模の追加投資が売上収益と利益の成長につながるか。第三に、急騰局面で株価に織り込まれた高い成長期待がどこまで修正されたかです。
次の大きな確認機会となるのが、10月30日に予定されている2027年3月期第2四半期決算です。村田製作所の強みは、AIブームというテーマだけではありません。世界規模の顧客基盤、電子部品の技術力、巨額の設備投資を実行できる財務力があります。
一方で、株価は企業の「現在」ではなく「未来」を先に織り込みます。だからこそ、好決算でも株価が下がることがあります。村田製作所を見るうえで重要なのは、「株価が大きく下がったから買い」と考えることではなく、AIデータセンター需要の拡大が実際の受注、生産、そして利益へどこまで転換されるかを見極めることです。
業績が株価に織り込まれた高い期待に追いつくのか。それとも、AI関連株として膨らんだ期待がさらに修正されるのか。村田製作所株はいま、その分岐点にあるといえそうです。
文=KIJIKUL編集部
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