サンマルクが「つるとんたん」を買収!「うどん」は成長エンジンになるか?

「サンマルクカフェ」「鎌倉パスタ」を展開するサンマルクホールディングス(HD)が、人気うどん店「つるとんたん」を128億円で買収します。2024年には「京都勝牛」「牛かつもと村」を相次いで傘下に収め、今度はうどんです。M&Aによって売上高は急拡大した一方、2027年3月期第1四半期は営業利益が4割超減少し、株価も3月の高値から下落しています。外食M&A戦略は、サンマルクの新たな成長エンジンになるのでしょうか。

128億円で「つるとんたん」買収!うどんに初参入

サンマルクホールディングス(HD)が、また大型M&Aに動きました。2026年9月17日、同社はカトープレジャーグループ傘下のケー・エキスプレスから、人気うどん店「つるとんたん」などの事業を承継すると発表しました。買収額は128億円。9月30日に100%子会社「つるとんたん」を設立し、12月1日の事業承継を予定しています。

対象となるのは、「つるとんたん」国内13店舗を含む国内直営14店舗、ニューヨークやハワイの海外フランチャイズ2店舗に加え、製麺・ギフト商品販売事業です。2026年3月期の対象事業の売上高は約61億3500万円。売上高の約2.1倍にあたる128億円を投じる大型案件です。

なぜ、そこまでしてうどんなのでしょうか。狙いは単純に「うどん市場が伸びているから」ではありません。サンマルクHDが欲しいのは、国内外で通用する「和食ブランド」です。同社は、チェーン展開のノウハウや物件情報網を使った国内出店、グループ物流網による調達効率化、さらに海外展開の拡大をシナジーとして挙げています。

「つるとんたん」は店舗数こそ少ないものの、大きな器や豊富なメニュー、店舗ごとに異なる空間など、一般的な低価格うどんチェーンとは異なるブランドを確立しています。訪日客にも分かりやすい「日本食」であり、海外にも展開しやすい。このブランド力を128億円で買ったと考えれば、今回のM&Aの狙いが見えてきます。

好業績から4割減益、株価は高値から2割安

ただし、今回の大型M&Aには別の側面があります。サンマルクHDの業績は、2026年3月期までは大きく伸びていました。2026年3月期の売上高は884億3200万円で前期比24.7%増、営業利益は51億4900万円で41.3%増、純利益も27億500万円で6.5%増でした。

急成長を支えたのがM&Aです。2024年に牛カツ専門店「京都勝牛」と「牛かつもと村」を相次いで買収しました。「京都勝牛」は2026年3月末時点で直営69店、FC34店の計103店、「牛かつもと村」は直営36店まで拡大しています。つまり、買収したブランドが実際に業績拡大に貢献した実績があります。

ところが、2027年3月期に入ると様子が変わります。第1四半期の売上高は220億6100万円と前年同期比2.9%増えたものの、営業利益は5億8900万円で42.2%減、経常利益は5億6300万円で41.8%減、純利益は2億2700万円で45.6%減となりました。レストラン事業は1.5%増収ながら営業利益14.6%減、喫茶事業も4.3%増収ながら営業利益27.5%減です。

会社側は外食を取り巻く環境について、仕入れコストや人件費の上昇、消費者の生活防衛意識などを挙げています。

株価もこれを反映しています。2026年3月11日に3195円の年初来高値を付けましたが、8月6日には2290円まで下落。9月24日の終値も2506円で、高値から約22%低い水準です。したがって、現在のサンマルクHDは「業績不振企業」というより、M&Aで売上規模を急拡大させた後、コスト増によって収益性が追いついていない局面と見るほうが実態に近いでしょう。

「サンマルク」「鎌倉パスタ」に続くブランド

サンマルクHDには、もう一つの課題があります。ブランドが少ないのではなく、むしろ多すぎるほどなのです。「サンマルクカフェ」「鎌倉パスタ」のほか、「ベーカリーレストラン・サンマルク」「倉式珈琲店」「神戸元町ドリア」「台湾小籠包」「すし処函館市場」など、約30の飲食ブランドを抱えています。

しかし、長年にわたりグループを支えてきたのは、サンマルクカフェと鎌倉パスタです。2026年3月末のサンマルクカフェは289店舗、鎌倉パスタは210店舗。一方で、不採算店を整理しているブランドもあります。会社の決算資料でも「ベーカリーレストラン・サンマルク」や「台湾小籠包」などで不採算店舗の整理に取り組んでいることが示されています。

新しいブランドをつくることと、それを200店、300店規模まで育てることは別物なのです。そこでサンマルクHDが選んだのが、ゼロから育てるのではなく、すでに強いブランドをM&Aで手に入れる戦略でした。その成功例が牛カツです。「京都勝牛」と「牛かつもと村」を合わせた店舗網は急速に拡大し、会社自身も牛カツ定食業態を「成長ドライバー」と位置付け、国内出店と海外展開を進めています。

つるとんたんも同じ発想です。ただし、牛カツと同じように大量出店すれば成功するとは限りません。つるとんたんの魅力は、大型の器、幅広いメニュー、個性的な店舗空間など「店そのものを楽しむ体験」にあります。店舗を標準化して急拡大すれば運営効率を高めやすくなりますが、ブランドの希少性を失う恐れもあります。

「チェーン化すればするほど儲かる」という発想と、「店舗数を絞るからブランド価値が保たれる」という発想をどう両立するか。ここが128億円買収の最大の難所でしょう。

外食M&AはサンマルクHDを成長軌道に乗せるか

外食業界では現在、有力ブランドを買収して成長を加速させる動きが相次いでいます。背景には国内市場の成熟があります。人口が減少する日本で、自前の新ブランドを立ち上げ、数十年かけて全国チェーンへ育てるだけでは成長に時間がかかります。そこで、すでに顧客を持つブランドを買い、自社の店舗開発力、物流網、人材、資金を投入して拡大するM&Aが有力な選択肢になります。

サンマルクHDはまさに、この戦略へ大きく舵を切っています。2026年3月期末の現金及び現金同等物は約149億円ですが、長期借入金も約175億円あります。長期借入金の返済も進めています。さらに、2027年3月期第1四半期末には、のれんが約147億円、商標権が約39億円残っています。

ここにつるとんたんの128億円買収が加わります。もちろん、買収額128億円のすべてが新たなのれんになるわけではありません。しかし、高い価格で取得したブランドほど、想定通りの利益を上げられなければ将来の減損リスクが経営の重荷になる可能性があります。

一方、成功した場合のインパクトも大きいでしょう。サンマルクHDは2027年3月期に売上高930億円を計画しています。今回の買収対象事業の売上規模は約61億円ですから、既存事業との単純比較でも決して小さくありません。

重要なのは、うどんを買ったことではありません。サンマルクHDは「サンマルクカフェ」「鎌倉パスタ」を自前で育ててきた会社から、「京都勝牛」「牛かつもと村」「つるとんたん」といった有力ブランドを買収し、国内外へ広げる会社へ変わろうとしています。

「つるとんたん」を20店、30店と増やすだけでは、128億円という投資に見合う成長を実現できるかは見通せません。牛カツと合わせて「日本食ブランドを世界で展開する」という新しい収益モデルを構築できるかどうかが問われます。

サンマルクの次の成長エンジンは「うどん」そのものではありません。M&Aで獲得した強い和食ブランドを、価値を壊さずに大きく育てる力です。つるとんたんの買収は、その力が本当にあるのかを試す128億円の大型投資になりそうです。

文=KIJIKUL編集部
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