労働力人口は過去最高7057万人!それでも日本の「人手不足」が深刻なワケ

「働く人が減ったから人手不足」――。そう考えると、現在の日本の労働市場は説明できません。総務省の労働力調査によると、2026年6月には7057万人に達し、過去最高水準となりました。背景には女性や高齢者の労働参加があります。それでも企業の人手不足感は強く、人手不足倒産も過去最多を更新しています。働き手が増えているのに、なぜ人手が足りないのでしょうか。中小企業が取るべき対策とともに考えます。

働き手は過去最高7057万人、それでも「人手不足」

日本は人口減少社会に入り、「働き手が減っている」といわれています。確かに、15~64歳の「生産年齢人口」は減少しています。1995年をピークに減り続け、2050年には5275万人まで減少すると見込まれています。

ところが、実際に働いている人と、仕事を探している完全失業者を合わせた「労働力人口」は逆の動きをしています。2026年6月には7057万人に達し、過去最高となりました。女性や高齢者の労働参加が進んだためです。参考資料では、2026年5月時点で女性の労働力人口は3161万人、65歳以上は964万人と、いずれも過去最高とされています。

厚生労働省も、女性や高齢者の労働参加によって労働力人口が過去最高水準となる一方、少子高齢化を背景に「長期的かつ粘着的な人手不足」が続いていると分析しています。つまり、「労働市場に参加する人の数」と「企業が必要とする労働力」は別問題なのです。

一つの要因が、1人当たりの労働時間の減少です。一般労働者の月間労働時間は2015年の167.1時間から2025年には159.7時間へ、10年間で7.4時間減少しました。働き方改革によって長時間労働を前提とした経営が難しくなったこと自体は、労働環境の改善という意味で重要です。一方、企業から見れば、以前なら残業で吸収していた仕事を、より多くの人員や高い生産性で処理する必要が生じています。

さらに大きいのが「ミスマッチ」です。人手が余っている場所から不足する場所へ、簡単に人が移動するわけではありません。介護職員が不足しているからといって、事務職の求職者が翌日から介護職として働けるわけではありません。IT、建設、物流などでも、必要な資格や経験、勤務地、賃金、勤務時間と求職者の希望が一致しなければ、人がいても求人は埋まりません。

「日本全体の人数」ではなく、必要な場所に、必要な能力を持ち、企業と働き手の双方が納得する条件で働ける人が足りない。これが現在の人手不足の実態なのです。

女性、高齢者、外国人が増えても人手不足?

では、女性、高齢者、外国人の就業をさらに増やせば、人手不足は解消できるのでしょうか。

もちろん、重要な対策です。しかし、それだけに依存するのは難しくなっています。特に、女性と高齢者はすでに労働力人口を押し上げる大きな役割を果たしています。言い換えれば、これまで日本が持っていた「働いていなかった人に労働市場へ参加してもらう」という余力をかなり使ってきたことになります。

外国人材も同様です。人手不足が深刻な介護、外食、宿泊、建設、製造などでは重要な担い手ですが、外国人を採用すれば自動的に人手不足が解消するわけではありません。言語や生活面での支援、就労制度への対応、職場への定着などの受け入れ体制も必要です。

もう一つ考えなければならないのが、「人数」ではなく「労働投入量」です。例えば、フルタイムで働いていた人が退職し、短時間勤務の人を採用できたとしても、人数では1人対1人ですが、働ける時間は同じとは限りません。高齢者や子育て中の人が無理なく働ける環境をつくるには、フルタイム勤務を前提とした仕事の設計そのものを見直す必要があります。

結局、これからの企業経営では「何人採用するか」だけでなく、「1人がどれだけ付加価値を生み出せるか」が重要になります。日本生産性本部によると、OECDデータに基づく2024年の日本の時間当たり労働生産性は60.1ドル(購買力平価換算)で、OECD加盟38カ国中28位。主要先進7カ国では最も低い水準です。人手不足を採用だけで解決しようとする発想には、限界が近づいています。

中小企業は「採用」より先に仕事を減らす

特に厳しい立場にあるのが中小企業です。大企業と同じように賃金を引き上げ、大規模な採用広告を展開し、福利厚生を充実させることには限界があります。求職者がより高い給与や柔軟な働き方を求めれば、採用競争でも不利になりやすくなります。だからこそ、発想を「どう採用するか」から「人が少なくても回る会社をどうつくるか」に変える必要があります。

まず取り組みたいのが、仕事そのものの棚卸しです。何年も続けている会議、社内資料、紙の申請、二重入力、過剰な承認作業はないでしょうか。「昔からやっているから」というだけで残っている業務をなくすことは、新たに人を1人採用するのと同じくらい効果を持つ場合があります。

次にDXとAIです。在庫管理、会計、給与計算、受発注、営業管理などをデジタル化し、定型的な資料作成や問い合わせ対応に生成AIなどを活用すれば、社員をより付加価値の高い仕事に振り向けられます。アウトソーシングも含め、「自社の社員が担う必要のない仕事」を切り離すことも必要です。

そのうえで採用対象を広げます。女性、シニア、外国人に加え、副業・兼業人材、子育て中の人、遠隔地の人など、「週5日、1日8時間、会社に出勤できる人」だけを採用対象にしないことです。

採用ルートも求人広告だけではありません。社員紹介のリファラル採用、SNS、ダイレクトリクルーティングなどを組み合わせ、自社がどのような会社で、どのような働き方ができるのかを発信する必要があります。

人手不足で「仕事があるのに倒産」が増える?

人手不足を放置した場合、企業経営への影響は採用難だけでは済みません。帝国データバンクによると、2026年上半期の「人手不足倒産」は227件と過去最多を更新しました。しかも、従業員10人未満の企業が176件と約77.5%を占めています。建設業65件、サービス業59件、運輸・通信業38件と、人がいなければ事業そのものを動かせない業種で目立ちます。

実際、同社の調査には、案件があっても働き手を集められず、受注したくても受注できないという企業の声も寄せられています。

これは中小企業にとって重要な問題です。人が足りない→受注を断る→売上が減る→賃上げできない→さらに採用できない――。この悪循環に入れば、需要がある企業でも経営が行き詰まります。

逆にいえば、人手不足対策は人事部門だけの問題ではありません。「採用できないなら、採用人数を増やす」という発想ではなく、商品やサービス、価格、業務工程、IT投資まで含めた経営戦略として考える必要があります。

労働力人口が7057万人まで増えても、人手不足は解消していません。この一見矛盾した数字が示しているのは、日本企業の課題が「人の数」だけではなくなったということです。女性、高齢者、外国人など多様な人に働いてもらう。同時に、不要な仕事をなくし、DXやAIで省人化し、社員1人当たりの生産性を高める。

「人を増やして仕事を回す」から「少ない人でも成長できる会社をつくる」へ。人手不足が常態化する時代には、この転換こそが中小企業の生き残りを左右することになりそうです。

文=KIJIKUL編集部
※本記事は情報提供を目的として作成したものであり、特定の企業、商品、サービス、金融商品、投資その他の取引を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容は記事公開時点の公開情報等に基づいており、意見・見解・予測などは執筆者または編集部の判断によるもので、予告なく変更される場合があります。内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、最終的な判断はご自身の責任において行ってください。【KIJIKUL編集部】

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