5年連続値上げ!鳥貴族10月から全品「410円」の裏で進む外食産業の異変

写真はイメージです。

焼き鳥チェーン「鳥貴族」がまた値上げします。2026年10月から全品390円を410円へ引き上げ、2022年以降では5年連続の値上げです。それでも客足は堅調で、運営会社の売上高は過去最高を更新しました。ところが営業利益は減少し、中期経営計画も下方修正。株価も低迷しています。さらに食料品の消費税率引き下げでは、外食は対象外となる見通しです。鳥貴族の現在から、飲食店を襲う物価高と日本経済の変化を考えます。

5年連続値上げでも鳥貴族に客が来る理由

焼き鳥チェーン「鳥貴族」が2026年10月1日、フードとドリンクの均一価格を税込390円から410円へ20円引き上げます。「トリキ晩餐会」も3900円から4100円、テイクアウトも390円から410円になります。鳥貴族は1986年に全品均一価格を導入し、長年「安く飲める居酒屋」の代表格として成長してきました。

しかし、その鳥貴族でも値上げが常態化しています。2022年に350円、2023年に360円、2024年に370円、2025年に390円、そして2026年には410円。5年連続の値上げです。

なぜ、毎年のように価格を上げなければならないのでしょうか。会社が今回挙げた理由は、国産鶏肉や野菜などの原材料費、人件費、エネルギーコストの上昇です。店舗オペレーションの改善、仕入れの見直し、フードロス削減などを進めても吸収できなくなりました。鳥貴族は2016年からフードメニューの食材をすべて国産化しており、その品質を維持するためにも価格転嫁が必要になっています。

興味深いのは、値上げしても客が離れていないことです。2026年7月期の国内鳥貴族の直営既存店は、客数が前年比3.8%増、客単価が2.8%増となり、売上高は6.7%増えました。2025年5月に370円から390円へ値上げした後も、会社は「ご利用状況への大きな影響は見られず」と説明しています。

鳥貴族の強みは、単なる「安さ」ではなくなっているのでしょう。国産鶏肉を使い、名物の「貴族焼」などを提供し、お通し代も取らない。そして何を頼んでも価格が同じなので会計が分かりやすい。値上げしても「この価格ならまだ納得できる」という顧客との関係を築いていることが、客離れを防いでいると考えられます。

ただし、410円には別の意味があります。5品頼めば2050円、10品なら4100円です。均一価格だけに、20円の値上げは注文するすべての商品にかかります。390円から410円へのわずか5%ほどの値上げでも、利用者が感じる負担は徐々に大きくなります。

居酒屋経営は過去最高売上でも減益

鳥貴族の決算を見ると、現在の外食産業が置かれた状況がよく分かります。エターナルホスピタリティグループの2026年7月期売上高は前年比10.6%増の512億5400万円と過去最高を更新しました。

ところが、営業利益は10.4%減の27億9700万円、純利益は23.4%減の13億1800万円でした。売上高営業利益率も前期の6.7%から5.5%へ低下しています。まさに「売れているのに利益が減る」状態です。会社自身も、原材料価格、エネルギー、人件費に加え、店舗の内装・建築費まで上昇していると説明しています。

しかも、実績は会社計画にも届きませんでした。3月時点では営業利益34億3000万円を予想していましたが、実績は27億9700万円。18.5%下振れしました。新規出店の遅れ、人件費など販管費の増加、海外直営店の先行赤字などが利益を押し下げました。

その結果、2027年7月期を最終年度とする中期経営計画も大幅に下方修正しました。営業利益目標は60億円から30億7800万円へほぼ半減。営業利益率も10%から5.4%へ引き下げました。会社は、中計策定時の想定を超えるインフレによって、新規出店や利益率改善が計画通り進まなかったことを理由に挙げています。

株式市場も厳しい目を向けています。株価データでは、2026年3月2日に1890円だった株価は、6月22日に1308円まで下落。9月11日終値も1359円で、高値から約28%安い水準です。

これは鳥貴族だけの問題ではありません。帝国データバンクによれば、2026年上半期の飲食店倒産は473件と過去最多を更新しました。なかでも居酒屋などの「酒場・ビヤホール」は125件で、前年同期から19%増え、こちらも過去最多です。食材費、光熱費、賃金が上昇する一方、それを価格へ十分転嫁できない店ほど苦しくなっています。

鳥貴族のような大手ですら毎年値上げしなければ利益を守れないのですから、小規模な居酒屋が置かれている状況はさらに厳しいといえるでしょう。

食料品は消費税減税、外食は対象外

そこへ新たな問題が浮上しています。政府は物価高対策として、2027年4月から2年間、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品の消費税率を1%へ引き下げる方向で準備を進めています。所得に応じた給付も組み合わせ、全体として「飲食料品にかかる消費税の実質ゼロ化」を目指す構想です。

しかし、現在の軽減税率と同じ対象なら、店内で食べる外食は減税されません。スーパーで買う食品の税負担が下がる一方、居酒屋やレストランでの食事には10%の消費税が残ることになります。

例えば、家庭で食べる食品が減税によって安くなれば、「今日は外食をやめて家で食べよう」という動きが強まる可能性があります。外食産業から見れば、食材費や人件費が上がって値上げせざるを得ないところへ、内食との価格差まで広がりかねません。

政府もこの問題を認識しています。高市首相は7月30日の会見で、外食産業への影響を見極めたうえで、資金繰りなどの予算措置を検討すると表明しています。消費者の負担軽減を目的とする食料品減税が、結果として飲食店には新たな競争条件の悪化をもたらす可能性があるわけです。

居酒屋は「安さ」だけでは生き残れない

では、飲食店はどう生き残ればよいのでしょうか。一つの答えを鳥貴族自身が示しています。

第一は、値上げできる商品やブランドをつくることです。値上げを避け続ければ、原材料費や人件費の上昇を企業がすべて負担することになります。鳥貴族は390円へ値上げしても既存店の客数を増やしました。値段ではなく、「410円でも行きたい」と思わせられるかが重要になります。

第二は、生産性を上げることです。仕入れ、メニュー、店舗オペレーション、フードロス、出店コストなどを見直し、1店舗当たりの利益を高めなければ、売上が増えても利益が残りません。

第三は、他店では代替できない価値をつくることです。帝国データバンクも、外食では価格だけではなく、食事そのものの魅力や演出といった要素が重要になっていると指摘しています。

鳥貴族は2027年7月期に売上高572億3100万円、営業利益30億7800万円、純利益18億9100万円を見込み、増収増益への回復を計画しています。しかし、売上を増やすだけでは十分ではありません。「値上げしても客が来る」から、「値上げして利益も増える」へ移れるか。

5年連続の値上げ、過去最高売上と減益、中計下方修正、株価低迷、そして食料品減税。鳥貴族を取り巻く一連の出来事は、物価と賃金が上がる日本で、外食産業が「安さ」だけでは生き残れない時代に入ったことを象徴しているのではないでしょうか。

文=KIJKUL編集部
※本記事は情報提供を目的として作成したものであり、特定の企業、商品、サービス、金融商品、投資その他の取引を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容は記事公開時点の公開情報等に基づいており、意見・見解・予測などは執筆者または編集部の判断によるもので、予告なく変更される場合があります。内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、最終的な判断はご自身の責任において行ってください。【KIJIKUL編集部】

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