フジクラ株価の乱高下!2度の業績上方修正でも市場が迷う「AI成長株」の実力

電線大手のフジクラの株価が激しく揺れています。2026年5月14日に7933円の年初来高値をつけた直後に急落し、6月には業績上方修正を受けてストップ高。その後再び下落しましたが、8月7日に今期2度目となる大幅な業績上方修正を発表すると株価は再び急騰しました。業績そのものは絶好調なのに、なぜ株価はここまで乱高下するのでしょうか。背景には、生成AI関連株ならではの高すぎる市場期待があります。

フジクラ株は7933円から半値、上方修正でストップ高

電線大手のフジクラの株価は、企業業績だけを見ていると理解しにくい動きを続けています。

2026年5月14日、株価は一時7933円まで上昇し、年初来高値を更新しました。ところが、同日に発表した2026年3月期決算をきっかけに急落しました。不思議なのは、決算そのものが悪かったわけではないことです。2026年3月期の売上高は前期比20.7%増の1兆1823億円、営業利益は39.2%増の1887億円、純利益は72.5%増の1572億円と大幅な増収増益でした。

市場が失望したのは、2027年3月期の会社予想です。売上高1兆2430億円、営業利益2110億円と増収増益を見込んだ一方、純利益は1560億円と前期比0.7%減を予想しました。会社側は、光ケーブルの急激な増産によって製造に使用する水素などの資材・ガスの調達が追いつかなくなるリスクを保守的に織り込んでいました。業績は好調でも、市場が期待していたほど強気な見通しではなかったのです。

ところが約1カ月後、状況は一変します。

6月18日、フジクラは早くも業績予想を上方修正しました。通期売上高を1兆2430億円から1兆4620億円へ、営業利益を2110億円から3100億円へ、純利益を1560億円から2290億円へ引き上げました。営業利益は当初予想から46.9%もの上方修正です。

背景には、当初想定していなかったハイパースケーラー向け光コンポーネント製品の受注、売価アップ、懸念していた水素不足の緩和がありました。市場は大きく反応し、6月19日の株価は5161円でストップ高となり、その後も買いが殺到しました。しかし、株価は再び下落します。

5月14日の7933円から6月11日には3888円まで下落し、その直後にはストップ高――。わずか数週間で企業価値に対する市場の評価が大きく振れたことになります。

2度の上方修正!フジクラの業績は信用できるのか

そして8月7日、フジクラは再び市場を驚かせました。

2027年3月期第1四半期の売上高は前年同期比50.1%増の4020億円、営業利益は155.1%増の1048億円、純利益は156.8%増の804億円となりました。利益が前年同期の2.5倍以上に膨らむ驚異的な決算です。

けん引したのが情報通信事業です。データセンター向け需要の拡大に加え、米国以外の新規データセンター案件で光コンポーネント製品の大量受注を獲得しました。情報通信事業の売上高は83.9%増の2644億円、営業利益は188.3%増の980億円。全社営業利益1048億円の大部分を同事業が稼いでいます。

現在のフジクラが、従来の「電線会社」ではなく「生成AI・データセンター関連企業」として評価される理由がここにあります。

さらに同日、会社は今期2度目となる業績予想の上方修正を発表しました。通期売上高は6月時点の1兆4620億円から1兆7550億円へ、営業利益は3100億円から4320億円へ、純利益は2290億円から3260億円へ引き上げました。5月14日時点の営業利益予想は2110億円でしたから、わずか3カ月弱で4320億円と2倍以上になった計算です。

ここまで予想が変われば、「最初の予想は何だったのか」と感じる投資家がいても不思議ではありません。ただし、「フジクラの決算は信用できない」と見るのは早計でしょう。

5月時点では原材料不足などのリスクを保守的に織り込み、6月には想定外の大型受注や売価上昇、水素不足の緩和を反映しました。さらに8月には第1四半期の実績を踏まえ、データセンター向け光コンポーネント需要の継続を通期予想に織り込んでいます。

むしろ特徴的なのは、会社側が慎重な予想を出す一方、株式市場がそのさらに先の成長を先取りしてしまうことです。

好業績なのになぜ急落する?株価を動かす「期待値」

フジクラ株の乱高下を理解するには、「業績が良いか悪いか」だけではなく、「市場の期待を上回ったか下回ったか」で考える必要があります。生成AI関連株では、この傾向が特に強くなります。

たとえば、市場が営業利益3000億円を期待している企業が2500億円を稼いでも、株価は下落する可能性があります。逆に2000億円程度と予想されていた企業が3000億円を達成すれば、株価は急騰します。

5月のフジクラがまさに前者でした。生成AIやデータセンター投資への期待を背景に株価が先行して上昇していたところへ、慎重な業績予想が発表されました。数字そのものは増益でも、市場には「物足りない」と映ったのです。

ところが6月には大幅な上方修正が発表され、「AI需要は想定以上だった」と評価が反転しました。そして株価が上昇すると、今度は市場の期待値そのものがさらに高くなります。好決算を出しても「もっと良い数字」が求められる状態になります。

つまり、フジクラは業績が不安定だから株価が乱高下しているのではありません。業績が急拡大するなか、それ以上のスピードで市場の期待値が切り上がったり、修正されたりするため、株価も激しく動いているのです。

しかもフジクラは、「電線会社」から「AI時代のデータセンターインフラ企業」へと市場での評価軸が変わりつつあります。こうした企業では、従来の利益水準やPERだけで適正株価を判断しにくくなり、株価変動も大きくなりやすいのです。

フジクラの中長期成長は本物なのか

では、中長期的にフジクラの成長を信じてよいのでしょうか。

最大のポイントは、生成AI向けデータセンター投資が一過性のブームなのか、長期的なインフラ投資になるのかです。2026年3月期の情報通信事業は、売上高6530億円と前期比44.7%増、営業利益1527億円と65.7%増でした。さらに2027年3月期第1四半期には営業利益が前年同期比188.3%増となっています。

生成AIではGPUなどの半導体が注目されがちですが、膨大なデータを高速で処理するには、サーバー間やデータセンター間を結ぶ光通信インフラも不可欠です。AIの計算量が増えれば、「計算する半導体」だけでなく「データを運ぶ光通信」の需要も増えます。この構造が続くのであれば、フジクラの成長は単なるAI相場の思惑だけではありません。

同社も中期戦略で、「守りの選択と集中」から「攻めの選択と集中」へ転換し、「情報インフラ」「情報ストレージ」「情報端末」などの成長分野へ経営資源を重点配分する方針を示しています。

一方、リスクもあります。

現在の利益成長は情報通信事業への依存度が非常に高く、第1四半期にはエレクトロニクス事業の営業利益が73.5%減となりました。AIデータセンター投資が減速すれば、現在の高い成長率を維持できなくなる可能性があります。大口顧客の設備投資、競争激化、原材料価格や供給制約にも注意が必要です。

2026年3月期の営業利益1887億円に対し、2027年3月期の最新予想は4320億円。純利益も1572億円から3260億円へ倍増する見通しです。少なくとも現在の決算数字を見る限り、乱高下しているのはフジクラの業績ではなく、市場の期待といえます。

投資家が見るべきなのは、次の株価の上げ下げだけではありません。光コンポーネント需要が何年間続くのか、高い利益率を維持できるのか、そしてAI関連以外にも収益源を広げられるのか。

この3点こそが、フジクラが一時的な「AI人気株」で終わるのか、中長期の「AI成長企業」へ進化するのかを決めることになるでしょう。

文=KIJIKUL編集部
※本記事は情報提供を目的として作成したものであり、特定の企業、商品、サービス、金融商品、投資その他の取引を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容は記事公開時点の公開情報等に基づいており、意見・見解・予測などは執筆者または編集部の判断によるもので、予告なく変更される場合があります。内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、最終的な判断はご自身の責任において行ってください。【KIJIKUL編集部】

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