「金麦」「本麒麟」もビール化!酒税一本化で始まるビール戦争と市場再編の行方
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2026年10月、ビール、発泡酒、新ジャンル由来の商品で異なっていたビール系飲料の酒税が一本化されます。長年、「安さ」を武器に市場を拡大してきた第3のビールは大きな転換点を迎え、サントリー「金麦」、キリン「本麒麟」、アサヒ「クリアアサヒ」、サッポロ「麦とホップ」などは相次いでビール化へ動き出しています。
2026年10月、ビール類の酒税が一本化される
2026年10月、日本のビール市場は歴史的な転換点を迎えます。ビール、発泡酒、新ジャンル由来の商品で異なっていたビール系飲料の酒税が、3350ml換算で54.25円に統一されるためです。
これまでビール系飲料は、麦芽比率や原料、製法の違いによって税率が異なっていました。ビールは酒税が高く、発泡酒や第3のビールは税負担が軽かったため、メーカー各社は「ビールに近い味をより安く提供する」商品開発を競い合ってきました。
しかし、この税制は2020年から段階的に見直され、ビールは減税される一方、新ジャンル由来の商品は増税される流れが続いてきました。そして2026年10月、いよいよ税率が一本化されます。
この変化は、単なる税制改正ではありません。約30年間続いてきた「税率差を生かした価格競争」が、大きな転換点を迎えることを意味しています。その象徴ともいえるのが、各メーカーによる主力ブランドのビール化です。
サントリーは「金麦」、キリンビールは「本麒麟」、アサヒビールは「クリアアサヒ」、サッポロビールは「麦とホップ」や「GOLD STAR」を、それぞれビールとして展開する方針を打ち出しています。これまで「新ジャンルだから安い」という価値を提供してきた商品が、「ビールとして選ばれるブランド」へ生まれ変わろうとしているのです。
発泡酒や第3のビールは、日本のデフレ時代を象徴する商品でした。
1994年、サントリーが発売した発泡酒「ホップス」は、麦芽比率を抑えることで、ビールよりも低い税率が適用される商品として登場しました。当時はバブル崩壊後で家計の節約志向が強まり、「少しでも安く飲みたい」という消費者ニーズと一致し、発泡酒市場は急拡大しました。
さらに2003年には、サッポロビールが麦芽を使わない「ドラフトワン」を発売し、第3のビール市場が誕生しました。その後、各社が競って新商品を投入し、「金麦」「本麒麟」「クリアアサヒ」「麦とホップ」など、現在も続く人気ブランドが誕生しました。当初は価格が最大の魅力でしたが、メーカーは品質改良を重ね、「ビールと遜色ない味わい」を実現していきます。
一方で国から見れば、ビールに似た商品が税率だけ異なる状態は公平性の面で課題がありました。そのため酒税制度の見直しが進められ、カテゴリーごとの税率差をなくす方向へ制度改革が進んできたのです。つまり発泡酒や第3のビールは、「高酒税」と「節約志向」という二つの時代背景が生み出した商品だったと言えます。
第3のビール離れはすでに始まっていた
実は、今回の酒税一本化を待たずして、第3のビール市場は縮小傾向にありました。最大の理由は価格差の縮小です。段階的な酒税改正によって新ジャンルは値上がりし、一方でビールは減税されました。その結果、以前ほど大きな価格差はなくなっています。消費者からすれば、「価格差が小さいなら、通常のビールを選ぼう」と考える人が増えるのは自然な流れでしょう。
さらに近年は、プレミアムビールやクラフトビール、糖質オフ商品、ノンアルコールビールなど、消費者の選択肢は大幅に広がっています。かつては「安いから買う」が最大の理由でしたが、現在は「おいしさ」「糖質の少なさ」「健康への配慮」「好みの香り」といった価値を重視する消費者が増えています。
物価高が続く一方で、「せっかく飲むなら少し良いものを」という消費行動も広がっています。メーカー各社が主力ブランドをビール化する背景には、こうした消費者心理の変化もあります。「金麦」や「本麒麟」は、もともとビールに近い満足感を目指して開発された商品です。
税率差という制約がなくなるのであれば、「ビール」を名乗ったほうがブランド価値を高められると判断したのでしょう。第3のビールとして成長してきた有力ブランドは、今後、ビール市場で新たな競争に挑むことになります。
今回の制度改正で影響を受けるのは家庭用市場だけではありません。業務用市場、とりわけ居酒屋業界にも大きな影響が及びます。低価格の飲み放題では、コストを抑えるため、発泡酒や新ジャンル由来の商品が採用されるケースもあります。こうした商品は、飲み放題の価格を抑えながら、ビール系飲料を提供する選択肢の一つとなってきました。
しかし、酒税一本化によって税負担の差がなくなると、従来のような税率面でのコストメリットは期待しにくくなります。しかも物流費や光熱費、人件費も上昇しています。飲食店は飲み放題料金を値上げするのか、それとも利益を削って価格を維持するのか、難しい判断を迫られるでしょう。
店舗によっては飲み放題の時間短縮や対象商品の変更、あるいはハイボールやレモンサワーなど利益率の高い商品の販売を強化する動きも考えられます。酒税一本化は、居酒屋のメニュー構成や収益構造にまで影響を及ぼす制度改正なのです。
スーパー・コンビニ・メーカーが挑むビール戦争
2026年10月以降、最も激しい競争が表面化するのは、小売店の酒類売り場でしょう。これまでスーパーやドラッグストア、コンビニは、「第3のビールが安い」という価格訴求で集客してきました。しかし、酒税による価格差が縮小すれば、新しい売り方が必要になります。
さらにPB(プライベートブランド)の強化も進む可能性があります。イオンや西友、ドン・キホーテなどが独自ブランドを拡充すれば、大手メーカーとの競争はさらに激しくなります。
メーカー側にも課題があります。ビール化によってブランドイメージの向上が期待できる一方、その分、「一番搾り」「スーパードライ」「黒ラベル」「ヱビス」といった既存の主力ビールとの競争も避けられません。
さらに物価高の影響で消費者の節約志向は依然として強く、ビール全体の市場が縮小する可能性もあります。
2026年10月の酒税一本化は、日本のビール市場にとって制度変更以上の意味を持っています。約30年間続いた「安さを競う時代」が終わり、「価値を競う時代」が始まるからです。消費者は、価格だけではなく、おいしさや品質、健康志向、ブランドへの信頼など、さまざまな要素を総合的に判断して商品を選ぶようになるでしょう。
一方で、価格だけが上がったという印象を持たれれば、ハイボールやチューハイ、ノンアルコール飲料へ消費が流れる可能性もあります。メーカー、スーパー、コンビニ、飲食店――。すべてのプレーヤーが新しい市場環境への対応を迫られます。
「金麦」「本麒麟」「クリアアサヒ」「麦とホップ」は、これまで築き上げたブランド力を武器に、新しいビール市場で存在感を発揮できるのでしょうか。2026年10月は、単なる酒税改正の日ではありません。ビール市場の競争軸が「価格」から「価値」へと大きく転換する、日本の酒類市場における歴史的な節目となりそうです。
文=KIJIKUL編集部
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