ハルメク株が高値から約2割安!不正アクセスと読者減少で問われる成長力

2025年下期に販売部数45.9万部を記録した雑誌『ハルメク』を擁するハルメクホールディングスの株価が、高値から約2割下落しています。その間に公表されたのが、ウェブメディア「HALMEK up」への不正アクセスです。10月15日の最終報では、個人情報が外部に流出した痕跡は発見されなかったと説明しました。一方、営業増益の裏で読者数や売上は減少しています。顧客との信頼を強みにする事業モデルは、何を問われているのでしょうか。
株価は高値から約2割安、不正アクセスも発覚
『ハルメク』は、50代以上の女性に健康、おしゃれ、料理、お金などの情報を届ける、定期購読型の月刊誌です。日本ABC協会の2025年下期の集計では販売部数45.9万部を記録し、女性誌だけでなく、全雑誌で8半期連続の販売部数トップとなりました。
ところが、株価は調整局面に入っています。2026年7月31日の終値1686円から上昇し、9月17日に取引時間中の高値2302円を付けました。翌18日は前日比7.44%安の2114円へ急落。10月22日の終値1873円は、高値から約18.6%低い水準です。
この間に明らかになった重要な懸念材料が、「HALMEK up」への不正アクセスでした。9月11日の初回公表では、社員1人のIDとパスワードが窃取され、管理画面へ不正にアクセスされたと説明しています。当時は調査中でしたが、顧客管理情報へのアクセスはログで確認されず、雑誌や商品販売に関わる事業等への影響もないとしていました。
顧客との関係を重視する企業だけに、情報管理への不安が投資家の警戒につながった可能性はあります。ただし、初回公表後も株価は上昇し、17日に高値を付けています。時系列だけでは、不正アクセスを18日の急落の主因と断定できません。短期上昇後の利益確定なども含め、複数の要因を考える必要があります。

最終報は「個人情報流出の痕跡なし」
10月15日、HALMEK upサイトに掲載された最終報は、外部専門家による調査結果を明らかにしました。会社が異常を確認したのは9月9日ですが、調査では、それ以前を含めて計5回の不正アクセスが判明しています。
不正アクセスが行われた日は、6月13日、8月7日、9月2日、3日、9日で、各日1回、計5回が確認されました。会社は9月10日に社員1人の認証情報の不正利用を特定し、パスワードを変更しました。個人情報流出の可能性を考慮して個人情報保護委員会へ報告し、同月10~12日には不審なプログラムを削除しています。
最終報では、個人情報が外部に流出した痕跡は発見されず、確認された5回の不正アクセスについて、サーバー上のファイルの閲覧、取得、外部転送を示す痕跡も確認されなかったと説明しました。
ここは、流出が確認された事件と区別する必要があります。一方、「痕跡が確認されなかった」という調査結果を、「不正アクセスによる問題はなかった」と言い換えることもできません。管理画面への侵入と不審なプログラムの設置は、情報管理体制を見直す契機です。
顧客にとって重要なのは、自分が利用するサービスへの影響を理解できることです。発生した事実、調査で分かった範囲、実施した対策を分かりやすく説明し続けることが、安心して利用できる関係の維持につながります。
雑誌・通販・体験をつなぐ「信頼」の価値
ハルメクの事業は、雑誌の販売だけではありません。情報を通じて読者とつながり、通販や店舗で商品を提案し、講座や旅行で体験を提供します。暮らしの課題を知ることから、商品を使ったり、実際に行動したりすることまで、同じブランドが関わるモデルです。
第1四半期決算説明資料の日本基準による内訳では、情報コンテンツの売上が約8億7900万円だったのに対し、ハルメク物販は約56億6500万円でした。雑誌の部数は重要ですが、収益力を判断するには、物販の動向も確認する必要があります。
強みは、顧客の声を複数の事業に生かせる点です。体形や肌の変化、着心地への要望などを捉え、記事と商品開発に反映する。講座やイベントでの反応も、次の提案を考える材料になります。
だからこそ、情報管理は事業モデルと切り離せません。通販を利用し、講座に申し込み、継続してサービスを受けるには、商品への満足とともに、安心して情報を預けられることが必要です。ただし、今回の不正アクセスから、通販システムまで侵害されたと推測することは適切ではありません。
「HALMEK up」は2026年5月、有料コンテンツを無料開放し、物販・広告を軸とするモデルへ転換しました。新しい顧客と出会うデジタルの入口を広げる段階だからこそ、集客や販売の仕組みと、それを支える情報管理を一体で整える重要性が高まっています。
読者43.1万人へ減少、成長回復には何が必要か
不正アクセスへの対応とは別に、業績には成長上の課題があります。2027年3月期第1四半期の売上収益は前年同期比3.5%減の90億4500万円。一方、営業利益は25.0%増の7億9000万円でした。
増益を支えたのは、広告効率や原価率の改善などです。会社は、採算の悪かったファッション関連の新聞広告を大きく抑制したと説明しています。不採算の売上を追わず、利益を残す構造へ変える取り組みといえます。
ただし、顧客基盤も縮小しています。2026年1~6月の平均読者数は、会社試算で43.1万人となり、前年同期の約46万人から減少しました。過去12カ月以内に同社サービスを利用したアクティブ顧客数も、2025年6月末の約136万人から、2026年6月末には約124万人へ減っています。これらは不正アクセスの発覚前の数字であり、今回の事件による減少ではありません。
45.9万部という実績だけで、足元も成長が続いているとはいえません。一方、紙の読者減少を、そのままシニアビジネス全体の限界と捉えるのも早計です。雑誌を購読しなくても、商品や講座を利用する顧客との接点はつくれるからです。
問われるのは、広告を抑えて利益を改善する段階から、採算を確保しながら顧客と売上を増やす段階へ進めるかです。物販の継続購入、新しい顧客の獲得、講座やイベントの収益性などが判断材料になります。
今回の不正アクセスについて、個人情報流出の痕跡が確認されなかったことは重要な調査結果です。そのうえで、再発防止を進め、利用者が安心できる説明を続けることが必要です。ハルメク株の持続的な回復を支えるのは、情報管理への信頼と、顧客基盤を再び成長へつなげる実績の両方です。
文= KIJIKUL編集部
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