牛丼戦争の勝者はすき家か吉野家か?松屋も挑む「牛丼の次」を稼ぐ競争の行方

※写真はイメージです。

すき家、吉野家、松屋の牛丼競争が変化しています。店舗網ではすき家が先行し、すき家を傘下に持つゼンショーホールディングスは、連結売上高1兆円を超える巨大企業に成長しました。一方、吉野家は店舗改革とラーメン事業を強化し、松屋は定食や複合店で追い上げています。ただし、増収でも利益が減るなど、多角化が成功を約束するわけではありません。牛丼戦争の勝者は誰なのか。3社の決算から、価格と店舗数だけでは決まらない競争の行方を探ります。

規模ではすき家が先行、決着はついたのか

「牛丼戦争に勝ったのは、すき家なのか」――。店舗網と企業規模を基準にするなら、すき家と、その親会社であるゼンショーホールディングスが先行しているといえます。

ゼンショーの決算短信によると、2026年6月末の国内すき家は2010店舗です。吉野家の国内事業に当たる吉野家セグメントは8月末で1287店舗、松屋フーズの国内牛めし業態は6月末で1197店舗。集計時点や業態区分には違いがありますが、すき家の店舗網の厚さが分かります。

企業全体では、さらに大きな差があります。ゼンショーの2026年3月期連結売上高は1兆2640億円、営業利益は814億円でした。吉野家ホールディングスの2026年2月期は売上高2256億円、営業利益80億円。松屋フーズホールディングスの2026年3月期は売上高1844億円、営業利益75億円です。

ただし、この数字を牛丼そのものの勝敗と読み替えるのは適切ではありません。ゼンショーには「はま寿司」や海外のテイクアウト寿司事業があり、吉野家にも「はなまるうどん」などがあります。グループの売上高には、牛丼以外の事業が含まれるからです。

3社の競争は、牛丼の販売量を競うだけの段階から、牛丼で築いた店舗網や調達力、ブランドを使い、日常の食事需要をどこまで取り込めるかを競う段階へ移っています。

かつての主戦場は、並盛りの価格と出店数でした。いまは「安い昼食を食べたい」「家族で利用したい」「少し高くても満足できる定食が欲しい」という異なる需要に、どう応えるかが問われています。

すき家の親会社は、すでに牛丼の先へ

ゼンショーの強さを理解するうえで重要なのが、すき家以外にも収益源を育てたことです。

2026年3月期の「グローバルすき家」は、国内外を合わせた売上高が3144億円でした。一方、「グローバルはま寿司」は3202億円と、すき家を上回っています。グループ全体の売上高に占める「グローバルすき家」の割合は、約4分の1です。

牛丼から出発した企業が、寿司やレストラン、海外の中食へ成長の範囲を広げたわけです。2027年3月期第1四半期も、はま寿司と海外中食が、それぞれすき家を上回るセグメント営業利益を計上しました。

これは、牛丼が不要になったという意味ではありません。すき家は幅広いトッピングやカレーなどをそろえ、一つの店舗で多様な食事需要に対応しています。そのうえで、グループとして別業態も持つことで、利用場面の異なる顧客を取り込んでいます。

調達、製造、物流を支えるグループ機能も重要です。複数の業態を展開する強みは、看板の数だけではありません。食材を安定的に調達し、加工して店舗へ届ける仕組みを、事業拡大につなげられる点にあります。

もっとも、規模が大きくなっても安全管理は欠かせません。すき家では異物混入事案を受け、清掃や設備面の対策を進めました。店舗網を広げる力と、全店で品質を維持する力は、両方が必要です。

吉野家は店を変え、松屋は食べる理由を増やす

吉野家は、牛丼の強みを残しながら、店舗と事業の両方を変えています。

2027年2月期上期の連結売上高は1214億円と前年同期比10.0%増え、営業利益は57億円と30.3%増加しました。吉野家セグメントでも、売上高が9.9%増、セグメント利益が48.2%増となっています。

国内では新サービスモデルへの転換を進め、8月末の導入店舗数は618店舗となりました。また、店内注文用タブレットは1192店舗に導入しています。トッピングやセット、鉄板を使った牛肉商品なども拡充し、客数と客単価の向上につなげています。

別の成長軸がラーメンです。グループ横断の推進体制を整え、製造・物流機能の活用や海外展開を進めています。牛丼の知名度を守りながら、次の収益源を育てる戦略です。

対する松屋は、定食やカレー、世界各地の料理など、来店する理由を増やしています。「今日は牛めし」「次は期間限定の定食」と、同じ店でも選ぶ楽しみを生み出しています。とんかつの「松のや」などとの複合店も、複数人で利用する際の選択肢を広げます。

2026年3月期は売上高が19.6%増、営業利益が72.3%増となりました。ただし、2027年3月期第1四半期は様相が変わりました。売上高は17.4%増の506億円でしたが、営業利益は28.0%減の6億9500万円でした。

増収には買収したラーメン事業などの連結効果も含まれます。売上高の伸びを、そのまま松屋の牛めしが支持された結果と捉えることはできません。原材料費や人件費が増えれば、売上拡大と利益成長は一致しないのです。

終わるのは牛丼か、安さだけの競争か

牛丼の時代が終わった、と結論づけるのは早計です。短時間で食べられ、持ち帰りもしやすい牛丼は、日常の食事を支える商品です。変わったのは、その一杯だけで成長を描くことの難しさでしょう。

牛肉やコメ、人件費などの負担が増すなか、価格を据え置けば利益が圧迫されます。一方、値上げをすれば、消費者は弁当やうどん、ほかの外食と比較します。競争相手は、牛丼御三家だけではありません。

そこで重要になるのが、価格に見合う満足感です。トッピング、定食、快適な店内、注文のしやすさなどを組み合わせ、「この値段なら利用したい」と思ってもらう必要があります。

ただし、メニューを増やすほど、食材管理や調理、教育は複雑になります。複合店も、厨房や人員を効率よく使えれば強みになりますが、注文が集中する時間帯に提供が遅れれば、利便性を損ないます。新商品の話題性と、毎日安定して提供できる仕組みは一体で考えなければなりません。

成長を見極める際も、売上高だけでは不十分です。値上げ後も客数を維持できているか、既存店の販売は伸びているか、人件費や原価の増加を吸収できているか。出店や買収の効果と、既存事業の実力を分けて見る必要があります。

現時点では、店舗網とグループ規模で、すき家・ゼンショーが先行しています。しかし、吉野家は国内事業の収益改善を進め、松屋も商品開発や店舗展開で存在感を高めています。

牛丼戦争の次の勝者は、最も安い一杯を出す企業だけではありません。手頃さを守り、顧客の選択肢を増やしながら、現場に無理を集中させず利益を残せる企業です。牛丼の需要がなくなるというより、並盛りの価格だけでは競争の行方を捉えきれない時代になっているのです。

文= KIJIKUL編集部
※本記事は情報提供を目的として作成したものであり、特定の企業、商品、サービス、金融商品、投資その他の取引を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容は記事公開時点の公開情報等に基づいており、意見・見解・予測などは執筆者または編集部の判断によるもので、予告なく変更される場合があります。内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、最終的な判断はご自身の責任において行ってください。【KIJIKUL編集部】

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